「蚤のかっぽれ」


 
あらすじ ピョン太はシングルマザーのハネ子と二人暮らし。蚤一族は戦後、DDTやらの化学兵器を散々にばらまかれ今や絶滅寸前。絶滅危惧種にでも指定して保護すればいいものを人間どもは、見つけるとアカイエカヒアリと同様、目の敵(かたき)にして徹底的に駆除する。

 もう蚤という言葉さえ死語寸前で、「ノミ行為撲滅」なんてろくでもないことにしか使われなくなってしまった。育ち盛りのピョン太だが、近頃はなかなか人間の血にありつけずに、犬猫・牛豚などの血を吸って我慢することもしばしばだ。

 ある日ピョン太は、久しぶりに人間の血にありつく。酔って帰って来てそのまま畳の上に寝てしっまたの腹の上で思う存分に血を吸ったピョン太は、満腹で眠くなって腹の上で寝てしまった。男のメタボの腹は波打って、ちょうど揺りかご、ハンモックのリズムで気持ち良く眠っていたが、しばらくして男は目をさました。

 男が起き上がると同時に、ピョン太は畳の上にこぼれ落ちてしまった。それを目ざとく見つけた男、「ふざけた蚤野郎だ。人の断りもなく生き血を吸いやがって」と、指でピョン太をつぶしにかかった」、逃げようと思っても血を吸い過ぎて動きが鈍いピョン太は、「どうかおじさん、勘弁してください」と謝るのみ。

 男「おや、こいつは人間の言葉を喋るのか。蚤は芸達者で蚤のサーカスなんてのもあると聞く。お前も何か芸をやってみろ。一流の芸だったら命だけは助けてやろう。これが血税というものだ」、「それじゃあ、かっぽれを踊ります」と、男の目の前でピョンピョンと踊り始め、隙を狙って男の後ろに高く飛んで逃げ出そうとしたピョン太だが、男の頭を越せずに男のぼさぼさの髪の中入ってしまった。目の前から見えなくなった蚤に、男は「血ばかり吸いやがって、これが本当ののみ逃げだ、なんて呑気でまた寝てしまった。

 ろくにフロにも入っていない男の髪の中は汗と油でべとついて、悪臭を放っているヘドロのジャングルだ。何度も脱出を試みるピョン太だが、もがけばもがくほど底なし沼にはまって行くようで、あえなく力尽きて死んでしまった。

 そんなことはお構いなし、知る由もない男はそのまま放っておいた。しばらくすると頭の中のピョン太の死骸から芽が出て来て、あっという間に大木の「蚤の木」となってしまった。
ここから先、男は『あたま山』の運命をたどることになる。




  
        






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