「応挙の幽霊」  三遊亭円弥


 
★あらすじ★  古道具屋が安く仕入れた幽霊の掛け軸を、訪ねて来たお得意の旦那に10両で売った。
品物は翌朝届けるということで、旦那は手付けの1両を置いて帰る。

古道具屋は大儲けしたので、幽霊の掛け軸の前で一人で祝い酒を飲み始める。しばらくして人の気配を感じてあたりを見ると幽霊が掛け軸から抜け出し前に坐って?いる。これがいい女だ。
幽霊の女は、掛け軸を買われるたびに恐いとか、気味が悪いといわれ、すぐ箱の中にしまわれてしまっていたが、あなたが酒を手向け、お経を唱えてくれたので嬉しくなって出てきたのだという。
そして自分は応挙が書いたものだという。

応挙の真筆なら20,30両では売れただろうとちょっと残念がるが、美人の幽霊のお酌で酒盛りが始まる。
幽霊の女は都々逸など歌い出す上機嫌だ。「三途の川でも、さおさしゃ届く、なぜに届かぬわが思い」なんて調子だ。
そのうちに幽霊の女は酔っ払って、掛け軸の中に帰って寝てしまう。
そのうちに朝になっても幽霊はまだ眠ったままだ。

お得意先の旦那は、古道具屋が朝に掛け軸を届けるというのに持ってこないのでやきもきしている。
そこへ、古道具屋が来る。掛け軸は持ってきていないという。

旦那 「どうして持ってきてくれなかった。店に置いておいてもしょうがないだろう」
古道具屋 「もう少し寝かせておきとうございます」

 収録:平成9年7月
NHKテレビ「日本の話芸」



     


 
★見聞録★  落ちの「もう少し寝かせておく」は、幽霊を寝かせておきたいの意と、幽霊の掛け軸が応挙の本物だと分かり手放すのが惜しくなり手元に置いておきたいという意の二つがあるのでしょう。後者の方は手付けの1両をもらっているので無理ですが。幽霊の登場が「野ざらし」や「骨つり」と似ています。

三遊亭円弥は芝居噺や女性の登場する噺を得意としていました。この噺の幽霊も、恐いというより、上品な美人のような感じで演じています。
もしこの掛け軸が応挙の真筆だとしたらいくら位でしょうか。テレビの「なんでも鑑定団」に時々、応挙の絵だというのが出てきますがほとんど全部が偽物のようです。
この噺のような美人の幽霊の掛け軸なら?千万でしょうか。

円山応挙は、「江戸中期(1732〜1795)の画家。初め狩野派に学ぶ。のち眼鏡絵の制作や、明・清の写生画および西洋画の遠近法を研究し、伝統的な装飾画様式に遠近、写実を融和させた新様式を確立した。代表作「保津川図屏風」「雪松図屏風」(三省堂大辞林) 




「応挙 幽霊図」 (『全生庵』 蔵)






演目表(1)へ    表紙へ    次頁へ