★あらすじ ある商家の大店の親子はそろって酒が好き。せがれは酒癖が悪く将来が心配なので、親父は二人で酒を断つ約束をする。
せがれの方は外でほかにやることも多いが、親父は店は番頭にまかせきりで婆さんと二人きり。何もやることはなく、退屈きわまりない。好きな酒を思い出し、「寒気がするので体の温まる物」と婆さんにそれとなく言うが、婆さんは知らばっくれて、「葛湯はどうでしょ」、「蜜柑のお湯」なんて冷たく素っ気ない。
「酒」と口に出すと、せがれと禁酒の約束をしたくせにとんでもないと冷たい。やっと婆さんを拝み倒し、一本だけという約束でやっと酒にありつける。飲み始めればもう止まらない。へべれけになるまで飲んでしまうのが、酒飲みの性(さが)だ。
そこへべろべろに酔ったせがれが帰って来る。親父はあわてて酒をかたづけさせ、ぐでんぐでんのせがれと向き合って座る。親父はせがれに何で約束を破って酒を飲んだのか問い詰める。
せがれは、ひいきの旦那に酒をすすめられたが、親父との約束だから飲めないと断ると、飲まないと出入り差し止めという。それでも男と男の約束だから飲まないと突っぱねたら、「お前はえらい、その意気で一杯いこう」と言われ、2人で3升飲んでしまったという。
親父はせがれに説教するが、酔いのせいでせがれの顔が幾つにもに見えて来る。
親父 「こんな化物に、この身代は譲れねえ」
せがれ 「俺もこんなぐるぐる回る家をもらってもしょうがねえや」
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