「質屋蔵」


 
あらすじ 夜な夜な質屋の三番蔵にお化けが出るという噂が町内に流れている。これを聞いた質屋の旦那は、大切な物を質物にした人の執着心、気が残って、物の怪と化したものだろうと考える。これでは店の信用が下がり、暖簾(のれん)に疵(きず)がつくことで放って置けない。番頭に蔵の見張りをしてお化けの正体を見極めるように言うが、空っきし意気地のない臆病な番頭は、「お暇をいただきます」と、情けない限りだが、いつも強そうな威勢のいいことばかり言っている、店に出入りの熊五郎に応援を頼むことで納得する。

 旦那に呼ばれた熊さん、何かしくじったかと、旦那も知らない酒樽、たくわん樽、味噌樽などの悪事をべらべらと喋り出した。聞いているうちにだんだん渋い顔になった旦那だが、「今日呼んだのはそんなことじゃない。おまえはいつも強いと言っているが本当か」と聞くと、安心した熊五郎、途端に威勢がよくなって腕まくりしてふんぞり返った。だが、三番蔵の化け物のことを頼まれると、急にぶるぶる震え出す始末だ。頼りにならず、いつ逃げ出すか分からない番頭と熊さんを店に軟禁状態にして、夜更けて二人を蔵の前へ見張りに出した。

 生きた心地もしない二人、酒を飲んでもガタガタと震えが止まらず、やがて草木も眠る丑三つ時となった。すると蔵の中がピカッと光り、ドカーンと大きな音。腰を抜かした二人だが、そこは恐いもの見たさと少しは残る責任感から、蔵の扉を開いて目をこらして見ると、櫓太鼓に続いて「片や〜、竜紋、竜紋、こなた〜、小柳、小柳、ハッケヨイ、ノコッタ、ノコッタ・・・・」と、誰か相撲を取っている。旦那の言うとおり、質入れした相撲取りの気が残った羽織が相撲を取っているのだ。

 すると今度は、棚の上の横町の藤原さんの質物の天神さまの掛け軸がするする〜と下がって開いた。びっくりして怖さも忘れて見ていると、梅の小枝を持った天神さまが、「東風(こち)吹かば匂(にほ)ひおこせよ梅の花主(あるじ)なしとて春を忘るな」と歩み寄り、

天神さま 「そちがこの家(や)の番頭か、藤原方に参り利上げせよと申し伝えよ」

番頭 「はっはぁ〜」

天神さま 「どうやら、また流されそうだ」


    



桂米朝の『質屋蔵【YouTube】




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