「狸の釜」

 
あらすじ 鯉(コイ)に化けてあわや鯉こくにされそうになって、「鯉の薪(滝)登り」で逃げ出した子狸がまた八五郎の家にやって来た。懲りもせずまた化けてくれると言うので、八五郎は寺のお尚茶釜が欲しいと言っていたのを思い出し、茶釜に化けてくれと頼む。子狸はお安い御用と、トンボを切って立派な茶釜に化けた。

 八五郎は茶釜を大きな風呂敷に包んで寺に持って行く。茶釜を見てすっかり気に入ったお尚は十円で買うと言う。思わぬ高値がつき八五郎は大喜びだが、お尚は火に掛けて試して見ると言う。あわてた八五郎は半金でいいからと、五円もらって子狸を置き去りにして逃げ帰った。

 お尚が小坊主に茶釜を火に掛けさせると、子狸はたまらず灰神楽を上げて飛び出して行った。

小坊主 「追い駆けて行ったら狸でございました」

お尚 「それで半金で騙(かた)られたか」

小坊主 「包んだ風呂敷が八畳でした」



茂林寺にて

 狸ゆかりの地は、『権兵衛狸』で



文(分)福茶釜(『新形三十六怪撰』)


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