「月並丁稚」  桂春団治(三代目)

 

★あらすじ★
 ちょっとこまっしゃくれた丁稚の定吉。店のあるじから「十一屋」へ使いを頼まれる。
あるじから「本町の佐兵衛のところからまいりました。今月の28日に月並みの釜をかけますによって、だんなさんによろしく」という使いの口上を教わるがなかなか覚えられない。

 なんとか覚えて先方へ行ったが、今度は口上を思い出せない。いつも物忘れをした時は、台所のお竹さんに尻をつねってもらうと思い出すというので、番頭が定吉の尻をつねるが全然感ぜず思い出せない。そこへ来たのが相撲の関取。力一杯つねるが効果なく、関取は相撲の稽古で力が入らなくなるといけないといい帰ってしまう。

 次ぎに現れた大工の棟梁、定吉にこちらを向くなと言って釘抜きで尻をひねる。
これにはさすがの定吉も痛がり、口上が口から出てきてしゃべり始めたが、「当月28日には月夜に釜抜きます」と間違えてしまう。

十一屋の主人 「なに、当月28日に月夜に釜抜く。当月28日は闇も闇、まことの闇じゃ。」


定吉 「そんなら、うちのだんなの言うたんは鉄砲かしら。」


 収録:昭和62年10月
TBSTV「お早う名人会」


        


 
★見聞録★ 東京では「粗忽の使者」で武士の噺です。
「月並みの釜」とは毎月のお茶会のことでしょう。それにしても、落ちの「鉄砲」は、「闇に鉄砲」で、無駄な行い、しても意味のないことのたとえですが、今ひとつピンときません。
「粗忽の使者」では、使者の地武太治部衛門が釘抜きで尻をひねられ、やっと思い出し、「口上を聞かずに参った。」と落とします。こちらの方がすぐに笑えます。

桂春団治(3代目)は昭和5年の生まれで実父の二代目に入門しました。春団治の高座は導入部の「枕」を入れず、すぐ落語の本筋に入ります。
端正な容姿で山村流の舞の名手でもあるそうで、静かで淡々とした語り口は、上方落語界で貴重な存在です。

「月夜に釜を抜かれる。」とは、「月の明るい夜に釜を盗まれる。油断して失敗することのたとえ。」(三省堂大辞林) この噺では、「月夜に釜を抜く」ですから盗み出す方でしょうか。



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