★あらすじ ちょっとこまっしゃくれた丁稚の
定吉。店の主人から「
十一屋」へ使いを頼まれ、「本町の佐兵衛のところからまいりました。今月の28日に
月並みの釜をかけますによって、旦那さんによろしく」という使いの
口上を教わるがなかなか覚えられない。
それでもなんとか覚えて定吉は先方へ行ったが、今度は口上を思い出せない。いつも物忘れをした時は、台所のお竹さんに尻をつねってもらうと思い出すというので、
番頭が定吉の
尻をつねるが、いつもひねられているので皮膚が硬くなっていて全然感ぜず思い出せない。
そこへ来たのが相撲の
関取。力一杯つねるが効果なく、定吉はくすぐたがっているだけだ。関取は相撲の稽古で力が入らなくなるといけないと言って帰ってしまう。
次ぎに現れたのが大工の棟梁で、「旦さん、お早ようございます。 えらい賑やかですが、相撲ですか?」
十一屋 「いやいや相撲と違うがな。子どもしが
”口上忘れた、尻ひねったら思い出す
”ちゅうので今、うちの番頭、それから関取にも尻ひねってもろたけどまっことこたえんで、難儀してるとこじゃ」
棟梁 「旦さん、わたいにひとつ任しとくなはれ」、定吉にこちらを向くなと言って
釘抜きで尻をひねる。これにはさすがの定吉も痛がり、口上が口から出てきてしゃべり始める。
定吉 「わたくし本町の佐兵衛とっから参りましたんで。え〜、当、当月28日には
月夜に釜抜きますによって、よろしゅう」
十一屋 「なに、当月28日に月夜に釜抜く? 当月28日は闇も闇、まことの闇じゃ」
定吉 「そんなら、うちの旦那の言うたんは
鉄砲かしら」