「うそつき村」


 
あらすじ 日本一の嘘つきとうそぶき、神田の千三つと呼ばれている男。今日も隠居の所で嘘を並べ立てている。いい加減うんざりしてきた隠居は、「千住の先のうそつき村はみんなうそつきで、中でも鉄砲の弥八は、口から出まかせに鉄砲のようにポンポンとうそを飛び出す。いくらお前でも弥八にはかなまうまい」、カチンときた千三つは、弥八をうそ競(くら)べで負かしてやろうとうそつき村に出掛ける。

 村に入って弥八の家を尋ねると、村人は親切丁寧に教えてくれる。だが言うとおりに行っても家はない。何度も聞いて村中回ったがたどり着けない。村人全員がうそつきなのをすっかり忘れていた。

 子どもなら正直だろうと、遊んでいる子どもに聞くと、弥八は父親で家はここだという。千三つは弥八とうそ競べをして負かして俺の弟子にしてやると豪語する。

 子どもは、「お父(とう)は、この土手に上って富士山を見ていたら倒れそうなので、今朝つっかい棒をしに行った」となかなかやる。千三つ「じゃあ、おっかさんは?」、「洗濯物(もん)が溜まったので琵琶湖まで洗濯に行った」と、子どもながら天晴な出来だ。

 千三つ「留守なら仕方ねえや、また出直して来よう」、追い打ちをかけるように子ども、「折角来たのに美味い物がなくて気の毒だな。今朝、薪(まき)が五束ばかりあったのを三束食っちまったから、あと二束残っている。おじさん食って行かねえか?」、千三つは、「俺もさっき五束食って来たから、そうは食えねえ」と、やっとホラを返す。子ども「じゃあ、炭団(たどん)はどうかい?」

 子どもがこれじゃあとても弥八にはかなうまいと、逃げ出す千三つに、子ども「おじさん、そっちへ行くとオオカミが出るよ・・・あぁ、そっちへ行くとウワバミに呑まれちまうよ」と、面白がってうそを投げている。

 外の声を聞いて弥八が家から出て来る。むろん富士山に出掛けてなどいやしない。
子どもは千三つとのやりとりを話し、「あわてて逃げて行く千三つは財布を落として行った」

弥八 「こっちへ出せ」

子ども 「へㇸ、ウソだよ」で子どもの方が一枚上手だ。

子ども 「お父はさっきまで何処へ行ってたんだ?」

弥八 「大きなを見て来たんだ」
子ども 「風呂桶かい?」

弥八 「この世界がすっぽりと入ってしまうくらいの大きな桶だ」

子ども 「ふぅ-ん、俺も大きなを見たよ」

弥八 「どんな竹だ」
子ども 「裏山のタケノコが見ているうちにずんずん伸びて、雲の中に隠れちまったよ」

弥八 「やい、いい加減にしろ、そんな竹があるもんか」

子ども 「そんな竹がなけりゃ、世界が入る桶のたがに困るじゃないか」



  

     
        



三遊亭金馬(三代目)の『うそつき村【YouTube】


弥八の兄貴分?の落語『弥次郎


349




表紙へ 演目表へ 次頁へ
アクセスカウンター