「よかちょろ」

 
あらすじ
 大店の道楽者息子の孝太郎は吉原の花魁に入れあげていて家に寄りつかない。番頭が心配して、「若旦那を信用して掛け取りに行かせましょう」と提案、大旦那もしぶしぶ与田さんの所へ二百円を取りに行かせたが、三日も戻って来ない。

 大旦那は、番頭にお前が余計なことを言うからだと小言をいい、帰ったらきびしく説教するから奥へ寄越すように言いつける。もうちゃっかりと帰っていた孝太郎は、番頭に吉原の花魁とのノロケ話を散々したあげく、親父に意見して来るという。

 孝太郎は親父は癇癪を起すと、すぐに煙管(きせる)でぶつが、あたしの体は花魁からの預かり物だから、顔に傷をつけるわけにはいかない。もし花魁が傷のわけを知ったらきっと、「なんて親です。そんな親父なんてのは人間の脱け殻で、死なないようにご飯を当てがっとけばいいんです。そういう親父は早くは片づけてください」と言うだろうと、段々興奮してきて番頭の首を絞め上げる始める始末だ。

 大声のやりとりが奥に聞こえ、「番頭!」と呼ぶ大旦那の声。孝太郎は「あたしがやりこめて、煙管が飛んできたら体をかわすから、二円やるからおまえが代わりに首をぬっと出しな」と、番頭を買収し大旦那の所へ。

 大旦那は与田さんから受け取った二百円はどうしたと追及する。孝太郎は、「全部使っちまった。ちゃんと筋道の通った無駄のない出費です」と、偉そうに動じない。

大旦那 「何に使ったかちゃんと言ってみろ」

孝太郎 「まず、ひげ剃り代に五円」、「一人三十銭もあれば顔中ひげでもあたってくれる」と、唖然とする大旦那に、

孝太郎 「花魁の三階の角部屋で、花魁があたしが湿してあげます。こっちをお向きなさいったら」と、大旦那の顔をグイと両手でこっちへ向けたから、大旦那は手を振り払って、「何をするんだ。あとは何に使った」、

孝太郎 よかちょろに四十五円」

大旦那 「それは何だ」

孝太郎 「安くて儲かるもので」、

大旦那 「安くて儲かる」と聞いて身を乗り出し、「何だそれは、見せてみろ」、

若旦那 「へい、女ながらもぉ、まさかのときは〜、ハッハよかちょろ、主に代わりて玉だすき〜、よかちょろ、すいのすいの、してみてしっちょる、味見てよかちょろ、よかちょろパッパッ しげちょろパッパ。これで四十五円」

 呆れて開いた口が塞がらず物も言えない大旦那、そばのおかみさんに「二十二年前に、おまえの腹からこういうもんが出来上がったんだ。だいたいおまえの畑が悪いから」と、八つ当たりだが、

おかみさん 「おとっつぁんの鍬だってよくない」と、やり返し夫婦喧嘩が持ち上がった。

若旦那の孝太郎はこの後、勘当となる。


  



江戸新吉原八朔白無垢の図

「山崎屋」の前半に、初代三遊亭遊三が当時流行った「よかちょろ節」を取り入れて、独立した噺にしたもので、サゲらしいサゲはない。
「よかちょろ節」は明治中頃に流行った俗曲で、「芸者だませば、七代たたる。パッパよかちょろ・・・」という歌詞だが、さまざまな替え歌が作られた。



立川談志の『よかちょろ【YouTube】




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