「吉野狐」

 
あらすじ 夜鳴きうどん屋安兵衛・おまきの夫婦が流している時に、安堂寺橋から身投げしかけている男を助ける。島之内の時計屋の息子の島三郎で、女遊びが過ぎて勘当されたと言う。

 島三郎を家に連れ帰った安兵衛が翌朝、時計屋に行くと、
時計屋主人 「なぜ助けなさった。ほっといてくれた方が良かったんじゃ、・・・あいつは勘当の身の上、家(うち)とはもう一切関係がない」

安兵衛 「そなら、 あのお子さん無いもんと諦めて、わしとこへ養子にくださるか」、時計屋も駄目と言うはずもなく、島三郎はうどん屋夫婦の養子となった。

 島三郎は安兵衛について手伝っているうちに、うどん屋にも慣れて仕事も覚えて来た。ある日、新町の木原という店の吉野という綺麗な娼妓が訪ねて来た。追い返そうと島三郎と揉めている間に入った安兵衛に、
吉野 「わたくし新町の木原席に勤めておりました吉野と申します。島三郎若旦那とは古うからの深い仲・・・嫁にしていただこうと思うて・・・ここに私が働いてる間に蓄えましたお金が千円ござります・・・」と言うことで、吉野は持参金つきで島三郎の押し掛け女房となった。

 島三郎と吉野は家主の計らいで道頓堀うどん屋の店を開くことが出来た。別嬪さんの吉野が店番で店は大盛況。吉野は美しい声で客の注文を、符牒で奥の島三郎へ通す。あんかけがヨシノで、しっっぽくがキヤ、きつねうどんがシノダ ・・・こんな具合だ。吉野さん時々間違えたりすると、「・・・ヨシノがシノダに替わって・・・」なんて調子だ。

 ある日、島三郎が出前から帰る途中で新町の女将さんとばったりと出会った。
女将 「まあ、お久しぶり・・・大和巡りしてからもう二年になりますわ。元林院あたりで野施行しましたなぁ・・・いつでもみんなであの時の話してまんね・・・吉野はんいつもあんたはんのこと言うたはりますわ」

島三郎 「吉野と会うんか?」

女将 「へぇ?今日も芝居へ一緒に来てまんのん。中の芝居へ吉野はんと旦那はんと三人で来てまんのや」。

 血相変えて店へ帰った島三郎、「あんた誰や?誰やあんたは?言わんか、言わなんだらひどい目に遭わすで、言いなはれ!」

吉野 「申します、申お~します。頃は一昨年(おととし)一月、寒風激しく吹きすさび、往き来の人も絶え・・・あしひきの大和の国は奈良町の野辺に住む、狐の親子五匹が難渋の折から、あなた様の野施行置いて賜る有難さ・・・この後は御身守護し奉らんと訪ね見ますれば、親御の元を追い出され、 今では流浪の身の上と聞き、吉野の君の姿を借り、畜生ながらも恩義を忘れぬ大和魂・・・かく物語りし上からはわれは古巣へ立ち帰らん」、キリッとひっくり返るとの本体を現した。

島三郎 「吉野がシノダに変わって・・・」



  
これは信太(しのだ)狐の葛葉姫で陰陽師安倍晴明の母親
落語『天神山』・『熊野古道①




生駒時計店(創業明治3年)
紀州街道①



うどん屋(江戸)



安堂寺橋から東横堀川



猿沢の池の西側が元林院町 《地図



道頓堀(日本橋から)

道頓堀芝居側(摂津名所図会)(『大阪市立図書館デジタルアーカイブ』)
「中座前」(大正8年頃)の写真(『大阪市立図書館デジタルアーカイブ』)








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