「あくび指南」

 
あらすじ 横丁にあくびの指南所ができた。一人じゃ行きにくいので、「あくびなんて月謝を払って習うもんじゃねえ」といやがる友達を引っ張って教わりに行く。

 早速、あくびの稽古が始まる。師匠は春夏秋冬のあくびがあり、秋は月、冬はこたつの中でのあくびだが、セリフが長過ぎて初心者には難しいので夏のあくびを教えるという。

 隅田川の首尾の松あたりに舟が舫ってある心持で、一日舟に乗っていて退屈して出るあくびの指南が始まる。キセルをこう持って、体を揺れ加減にして、「おい船頭さん船を少し上手へやってください。これからへ上って一杯飲んで、晩にゃ、仲(吉原)へでも繰り込んで新造でも買って遊ぼうか。舟もいいが長く乗っていると退屈で退屈で、あ〜ぁ(あくび) ならねえ」、こんな調子だ。男は何度も練習するが、ぎこちなくて上手くできない。

 待っていた友達はこれを見て、「教せえてる奴も、覚えてる奴もあきれた野郎だねえ。てめえたちはそんなことを言っていりゃあいいけれど、こうやって待っているもんの身になってみろ。退屈で退屈で、あ〜ぁ ならねえ」

師匠 「ああ、お連れさんはご器用でいらっしゃる」


      

猫の忠信』の浄瑠璃の師匠をあわよくばものにしようと通う「あわよか連」、「狼連」の稽古仲間や、夏の間だ稽古に行く「蚊弟子」に比べれば、この噺の師匠は男だし、弟子もくせがなく、あくびの稽古というのも他愛ない。筋も単調で短く、なんとか落ちで持っているような小品のようだ。だが、聞いているうちに馬鹿馬鹿しくて、こっちが眠くなってきて思わずあくびが出そうになる。作者はそこまで狙った傑作なのかも知れない。

「堀へ上がって・・・・」は、隅田川をさか上り、山谷堀へ入って日本堤の土手から吉原()へ行くということ。 『江戸時代の地図』(断腸亭料理日記より)


三笑亭可楽(8代目)の『あくび指南』【YouTube】



「浅草川首尾の松御厩河岸」
   

首尾の松跡
(蔵前橋西詰の南側)

首尾」のいわれには3説あるようだ。どれもこじつけの感じだが。今の松は7代目、もとは少し川下の川岸にあったそうだ。




首尾の松大川端椎の木屋敷(「絵本江戸土産」広重画)



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