「青菜」 桂枝雀

 
あらすじ 一仕事を終えて庭に打ち水をした植木屋に、この家の主人が井戸で冷やした柳蔭を勧める。

植木屋 「柳蔭てなもんは、昔は大名酒と申しまして、お大名より上がらなんだもんでございます。それをご当家で頂戴できるなんて、こんな結構なことはございませんのです」、ぺらぺらと喋りながら美味そうに飲んでいる植木屋に、

主人 「鯉は洗いにしてあるんじゃが、川魚はお嫌いか?」

植木屋 「何をおっしゃいます。鯉は昔は大名魚と申しまして、お大名より上がらなんだもんでございます」、なんてべんちゃらを言いながら美味そうに飲み食いする植木屋に、

主人 「植木屋さん、あんた青菜を食べてか?」

植木屋 「旦さん、今、何とおっしゃいました?青菜、贅沢なもんお上がりになって。当今はともかくとして、昔は大名菜ちゅうて大名より・・・」

主人 「そんなアホな、・・・奥や、植木屋さんが青菜が食べたいと言うで、堅とう絞って胡麻でも振りかけて持ってきとくれ」、「かしこまりましてございます」、しばらくして、

奥さん 「あのぉ〜、旦さん。鞍馬から牛若丸が出でまして、名も九郎判官・・・」 

主人「ほぉ、そうか、義経、義経・・・植木屋さん、すまんが菜はもうおしまいになったそうだ」 

植木屋 「旦さん、どなたかお客さんがお見えになったよぉで、奥さんが鞍馬から出でましてちゅうて・・・」

主人 「えらいこと耳に入れたなぁ。実はあんたに食べてもらおと思た青菜、みな食べてしもて無いんやそぉな。 家内が、菜(名)を食ろう(九郎)判官と言うたので、よし(義経)、よし(義経)と、来客に対しての隠し言葉のように言うたわけや」

 すっかり感心した植木屋は家に帰りこのことを話すと、女房もそんなことぐらい言えるという。風呂に誘いに来た友達の竹さんに酒を飲ませ、嫌いだという菜を無理やり勧めて女房を呼び、菜を持って来るように言う。

女房 「鞍馬から牛若丸が出でまして、名を九郎判官義経

植木屋 「・・・弁慶」



「付け焼き刃ははげやすい」・「生兵法はけがのもと」の噺は数多くありますが、植木屋の女房は間違いなく喋って、言い過ぎてしまったのですからましな方でしょう。

柳蔭は焼酎とみりんを合わせたもので「直し」ともいうそうですが、どうも甘ったるそうで飲みたい思いませんが植木屋さんは美味そうに何杯も飲んでいました。前半の仕事先の大家の水をまいた後の庭での涼やかさと、後半の狭い長屋でのやりとりの暑苦しさが対照的で、特に枝雀が演じると暑苦しさが倍増します。

サゲ弁慶は、人のおごり、お供でふるまわれることをいい(落語「船弁慶」の「弁慶」はそうした意味)、単なる語呂合わせでなく上方的な意味合いも含まれているという人もいますが、そこまで考える必要はないでしょう。
むしろ「弁慶の立往生」の「困って、進退きわまった」の意が含まれているのでは。「義経」といえば「弁慶」が出てくるのは自然の流れで、植木屋さんも困ってとっさに「弁慶」が出たのでしょう。


春風亭柳橋(6代目)の『青菜【YouTube】


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