★あらすじ 備前池田藩の殿様が諸国の大名を呼んで宴を開いた時のこと。ある酒豪の大名が自分と飲み比べができる相手を呼んでくれと言い出した。
城内をくまなく探してみても身分の高い者には見当たらず、お台所役の片山清左衛門という酒好きに相手をさせることになる。見事、清左衛門は飲み比べに勝ち、酒豪の大名も機嫌よく帰国した。これを喜んだ殿様は清左衛門に三百石を与えた。
清左衛門は妻女とはとうに死別し、子の清三郎と伴の家来の三人暮らし。三百石の身分となり、毎日好きな酒を飲んで気楽に過ごしていたが病いを得て床についてしまう。
余命いくばくもないと感じた清左衛門は薬の代わりに好きな酒を飲んで過ごしたいという。臨終の間際に、
清左衛門 「備前徳利に自分の絵柄を残したい。殿様に願い出てくれ」と清三郎に望みを託す。死んでも好きな酒のそばにいたいという父親の願いを殿様に願い出る。殿様もこれを聞き入れ、清左衛門の絵柄の入った徳利がどんどん焼かれるようになる。
清三郎も殿様の近習となり、江戸へ出ることになる。国元とは違う江戸の華やかさ、ついには吉原の佐野槌の花魁(おいらん)に入れあげてしまう。酒も親に似ての大酒飲みで、親の残した財産で遊び放題、回りの連中も心配するが一向にお構いなしだ。
そんなある夜、清三郎の枕元に清左衛門が立ち意見をされる夢を見る。次の夜も、その次も毎晩同じ夢を見て、やっと清三郎も改心し、吉原通いをぷつりと止めることにする。
するとその晩、父が清三郎の枕元にもうろうと現れ、一緒に酒を飲もうという。今どこにいるのかと問うと、「買われて来て、両国の酒屋で酒を入れられている」という。
そして毎晩、酒を飲みに清三郎のところへ来るようになる。清三郎も父親と一緒に飲むのが楽しみになってきたが、しばらくするとぷつんと来なくなってしまった。心配しているとある晩また清左衛門が現れた。
清三郎 「ご案じ申しておりました。お顔の色がすぐれませぬがいかがなさいました」
清左衛門 「いやあ、えらいことになった。このところ口が欠けたので醤油徳利にされてしまった」
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