「強情灸」


 
あらすじ 十人十色、人それぞれ顔形が違うように気性も違う。気の短い人、長い人、無精な人、強情な人など様々だ。長屋の源さんは陽気の代り目で腰が痛く、温めた方がいいというので近くのフロ屋の薬湯に入ったが、長く入り過ぎてのぼせて倒れて、水をかけられ逆に冷やされてしまった。湯にいた伊勢六の隠居が腰痛にはが効くと言うので据えてもらったがその熱いこと。後は自分で据えろ、上へ上へと据えるんだと言われ、一人では据えられないので、隣のカミさんに据えてもらったが、上へ上へ据えて行ったら、頭の上に来てしまいここからは下って目の玉だがどうしようかなんて悩んでいる。隣のカミさんもこんな据え方は初めてだと言ってはいたのだが。

 そこへやって来たのが友達の熊さんで、気短で強情な男だ。源さんから灸を据えてもらった話しを聞くうちに、あまり熱い、熱いと言うものだから癪にさわり、「灸なんか熱いもんか」といって、片腕をまくりもぐさを山のように乗せた。源さんはまるでソフトクリームのようだなんて呑気に見ていたが、熊さんは線香で火をつけようとする。源さんはやめた方が言いと止めるが、熊さんは石川五右衛門は釜ゆでにされながら、辞世の句を詠んだとか、八百屋お七は娘ながらに火あぶりの刑になった、かちかち山の狸は背負った柴に火をつけられた。それに比べればこんな灸はぬるま湯につかったようなもの、蚊に刺されたようなもんだと、悪強情丸出しだ。

 そして線香でもぐさのてっぺんに火をつけた。ゆらゆらと上がる煙を見て、「小諸出で見りゃあ浅間の煙だ」、全然熱くないなんて言っているが、まだ火が下へ回っていないのだから、そりゃあそうだが。よせばいいのに団扇(うちわ)で仰ぎ始め、そのうちに火が回ってきて猛烈の熱さになってきた。目を白黒、顔を真っ赤にして「石川五右衛門は・・・、八百屋お七は・・・石川五右衛門は・・・・」、ついに腕がもぎとられそうな熱さに我慢できずに、もぐさを払い落した。「あぁ、冷てぇ」、なんてまだ悪強情だが、
源さん 「石川五右衛門がどうした」

熊さん 「五右衛門はさぞ熱かったろう」





      
石川五右衛門                   八百屋お七





「かちかち山」(福娘童話集より)



柳家小さんの『強情灸【YouTube】


   

遍照院 《地図

「弘法のお灸」で知られた寺だが、今は遍照院ビル内になっている。

『東京名所図会』には「灸点に来る患者は、・・・・毎年4、5月の頃は最も繁昌し、一日平均千人を下らず・・・」とあるそうだ。

   「圓海山之道」(右端)は「峯の灸」で有名な円海山護念寺への道標(天明3年(1783))。 《地図》

鎌倉街道下の道の保土ヶ谷の金沢横町の所に置かれている。






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