★あらすじ けちの赤螺屋に夕べ男の子が生まれた。番頭の「おめでとうございます」に、旦那はいろいろ金がかかり身代が減ってしまうと渋い顔。
番頭 「今日はお祝いに味噌汁の実を入れてください」
旦那 「ちゃんと入っていますよ。3年前に買った二尺五寸の山椒のすりこ木が一尺五寸ぐらいに減っているのは、減った分が味噌汁の実になったんだよ」
そこへ摘まみ菜屋が通りかかったのを呼び止める。定吉にむしろを引かせ、その上に菜を全部開けさせて値を聞くと250文。旦那は1文にまけろという。
摘まみ菜屋はてっきり一文まけろだと思うが、旦那は一文にまけろだという。つまみ菜屋は、ふざけんなとかんかんに怒って、むしろの上のつまみ菜をかき集め帰ってしまう。むしろにはいっぱいつまみ菜がくっついている。それを定吉に拾わせ、味噌汁の実は一丁上がり、半分はおひたしにしろだなんて、さすがと言うか、そこまでやるか。
番頭が今度は、昼のおかずがないという。そこへ来たのが芋屋さん。旦那は芋屋を店の中に呼び入れ、ちょうど煙草が切れて買いにやっている所だなんて言って、芋屋の煙草を吸い、いろんなことを聞き始める。
芋屋は神田竪大工町に住んでいて、多町の青物市場から芋を仕入れるという。女房と子供と店賃の4人暮らし。昼飯はその辺のめし屋で食うという。旦那は、めし屋で食うのはもったいないからこれからは弁当を持ってきて店の台所で食べるように勧める。
そして、篭から出ている芋を取り出させ、「いい形の芋だ、床の間の置物にピッタリだ、一本もらっておこう、商人は損して得取れだ。気前よくしていればいずれお前も芋問屋になれる」、なんてこんな調子で3回繰り返し、芋を3本くすねてしまう。
旦那はまだ飽き足らず4本目に挑戦で、同じセリフを繰り返し始めるが、怒った芋屋、旦那のセリフを全部喋り、帰ろうとして煙草入れを見ると空だ。あきれて怒って店を飛び出して行った。
芋3本くすね、煙草は旦那の袂(たもと)の中。これを見ていた定吉が、泥棒みたいだと言うと、旦那はこんなことでもしなくちゃ銭はたまらいない。お前も見習って真似をしろとかえって説教だ。
定吉は旦那に言われ位牌屋へ位牌を取りに行く。下駄がないというと、「裸足で行って向うの下駄を履いて来い」だ。やっぱり旦那にはかなわない。
位牌屋へ行った定吉、旦那の真似をして店先で煙草をもらって吸いながら、旦那が芋屋に言ったセリフを繰り返す。位牌屋に位牌はどこで仕入れるのか、何人家族か、昼飯はどこで食べるのかなんて調子だ。位牌屋も仕方なく、呆れて応対する。
そのうちに定吉が棚の小さな位牌を見つける。子どもの位牌だという。
定吉 「珍しい位牌だ。床の間の置物にするからもらっておこう。気前よくしておけば位牌問屋になれる」なんて言い、位牌屋の煙草を袂(たもと)に入れ、駒下駄と草履を片方づつ履き、子どもの位牌を持って帰ってしまう。
店に戻って旦那に報告すると、「お前は本当にえらい」と旦那はすっかり感心する。誉められ調子に乗り、勢いづいた定吉、まだもらってきた物があると言って子どもの位牌を取り出す。
旦那 「馬鹿野郎、なんだもらうにことをかいて子どもの位牌を・・・、一体何にするんだこんな物」
定吉 「へへへっ、夕べ生まれた坊ちゃんのになさいまし」
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