「色事根問」

 
あらすじ 横町の甚兵衛さんの所へ女子(おなご)に惚れられる方法を教えてくれと喜六がやって来る。
甚兵衛 「昔から、一見栄、二男、三金、四芸、五声(せい)、六未通(おぼこ)、七科白(せりふ)、八力、九肝(きも)、十評判、てなことを言うなあ」

喜六 「なんぞ火傷か油虫のまじないか?」

甚兵衛 「今、言うた十の中で、一つでもお前にあったら女に持てるてなもんや。まず一見栄、見え形が肝心じゃ。粋な風とかこざっぱりしてるとか・・・」

喜六 「なるほど、わたしのこの格好はどおでおます」

甚兵衛 「どうでおますやなかろうが。つんつるてんの着物着よってからに」

喜六 「これね、十歳の時の着物ですねん」

甚兵衛 「それではあかんなあ。二は男前じゃが・・・はっきり、あっさり言うとお前の顔はブリの粗(あら)や。ドス黒くて、油ぎって、骨太で血生臭~い、えげつない顔やで」

喜六 「そんなはっきりと言わんといてえな。三の金は素通り、パスで結構でおます」

甚兵衛 「そりゃあ、言わずもがなやな。ほたら四の芸事はどうや、唄とか踊りとか?」

喜六 「踊りですか、踊りやったら得意でっせ」

甚兵衛 「ほぉ、どんな踊りやねん?」

喜六 「素っ裸にになってフンドシも取って、体中に墨汁塗って真っ黒にし、赤い手ぬぐい頭に被って、蝋燭(ろうそく)に火つけてケツに挟んで踊りまんのや」

甚兵衛 「何やそれ?」

喜六 「ケツの蝋燭が光ってになってまんねん。踊りの最後に屁で蝋燭の火を消しまんねや。ここが一番肝心の見せ場でっせ。ほんで、宇治の名物ほ~たる踊り

甚兵衛さん 「そんなもん、人前でやったんかいな」

喜六 「こないだの清やんの新築祝いでやりましたんや。友達も女たちも面白がって笑うて拍手喝采やったんやが、最後の屁が出やへんで気張ったら、身が一緒に飛び出しよって、座敷中、蛍の糞だらけ、女の子たちはキャーと逃げ出すし、清やんはそれから口聞いてくれまへんのや」

甚兵衛 「汚いわ、臭いわ、もうええわ。五の精も駄目やろ。不精でずぼらで、いつもフラフラして、精出して働いたことなどありゃせんだろうが。六のおぼこもお前は照れるとか、きまりが悪い、恥ずかしいなんてのとはまったく無縁で反対のすれっからしやし無理やな」

喜六 「七のセリフちゅうのは?」

甚兵衛 「そやなあ、喧嘩の仲裁でもできるよなセリフがあったらえぇが」

喜六 「仲裁やりましたがな、横町のポチとシロの喧嘩の仲裁」

甚兵衛 「そら犬やないか、何を考えとんねん」

喜六 「八の力も結構でおます。色男金と力は・・・ですねん」

甚兵衛 「色男はともかく、お前はおのれを知っちょるな。九の肝はどうじゃ、男は度胸ちゅうやろ」

喜六 「こう見えても度胸だけはありまっせ。嵐の夜中に一人で行って帰って来ましたんや」

甚兵衛 「それは偉いもんや。どこへ行ったんや?」

喜六 「一人で便所に小便に行けましたんや」

甚兵衛 「情けないわ、ほんまに。十は評判やが、お前あんまり評判ええことないんとちゃうか。悪い評判が立ってるで。風呂屋行たら下駄を履き替えて帰って来るちゅうて」

喜六 「わたい履き替えたやなんて言われるのが一番腹立ちまんねん。わて、風呂屋へ行く時は裸足で行きまんねん。そんで、帰りしなに下駄履いて帰って来まんねん」



  


出だしは『首の仕替え』・『稽古屋』と同じ







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