「小間物屋政談」
★あらすじ 江戸京橋五郎兵衛町の品物を背負(しょ)って売り歩く、背負い小間物屋の相生屋小四郎は、恋女房のお時と長屋で二人暮らしだ。上方で江戸の品物を売りさばき、珍しい物を仕入れて来ようと、お時のことを家主の源兵衛に頼み東海道を西に向かった。
小四郎は天下の険、箱根の山中で盗賊に襲われ身ぐるみ剥がされて。木に縛られている男に出会う。男は芝露月(ろうげつ)町の小間物屋問屋若狭屋の主人の甚兵衛で、箱根に湯治に行く途中に賊に襲われたと言う。小四郎は不憫に思い、金一両と自分の藍弁慶縞の着物と帯を与え、住所と名前の書付を渡した。
江戸に向かった若狭屋甚兵衛はその晩、小田原宿の旅籠布袋屋に泊ったが、もともと病身で夜中に急に苦しみ出して死んでしまった。宿役人が身の回り品を調べると、着物から「江戸京橋五郎兵衛町、家主源兵衛方、相生屋小四郎」の書付が出てきた。
すぐに家主の源兵衛と女房お時の所に、死骸を引き取りに来るよう知らせが届いた。急いで小田原宿へ向った源兵衛は着物と死骸を見て小四郎に間違いないと早合点し、火葬して骨にし江戸に持ち帰った。骨になって帰って来た小四郎の姿を見てお時は泣き崩れた。
三十五日も過ぎ、少しは落ち着いてきたお時に源兵衛は、これから女一人で暮らしていくのは大変だし、良からぬ輩もいるので間違えがあってからでは遅いからと再縁を勧めた。まだ小四郎が死んで一年も経っていないのにと断るお時を説き伏せ、小四郎のいとこで同業の三五郎と再婚させた。三五郎はお時を大事にし、前にも増して働くのですぐにお時の心もほぐれ、仲の良い夫婦となって同じ長屋で暮らしていた。
そんなある夜、死んだはずの小四郎がひょっこりと帰って来た。お時はびっくり仰天、幽霊が出たと思い、源兵衛の家に駆け込む。半信半疑で小四郎に会った源兵衛は、箱根山中での顛末を聞いて納得だが、葬式まで済んでいるからもう手遅れだ。
小四郎は源兵衛に、「女房を頼むと出掛けたのに、お時は間男を作っている」と詰め寄ったが、新しい亭主だと言われ愕然とする。お時も小四郎は可哀そうだが、もう元には戻れないと冷静だ。納得しないのは小四郎だ。お恐れながらと南町奉行所へ訴え出る。
名奉行大岡越前守は、関係者一同と若狭屋の女房のよしを呼んでお裁きを始める。
小四郎に「覆水盆に返らずと言う。お時は三五郎に渡し、お前は死んでしまえ!」と冷たく言い渡し、若狭屋の女房よしに、小四郎をどう思うか尋ねた。
よし 「小四郎様には大変迷惑を掛けたと思っております」
越前守 「越前が仲立ちをするが、小四郎と夫婦になる気はあるか」と問うと、よしは「喜んで仰せに従う」と言う。
小四郎は散々踏んだり蹴ったりの仕打ちをされた上に、勝手に人の古女房なんか押しつけやがってとふて腐れていたが、ひょいとよしさんを見てびっくり。
いい女で別嬪も別嬪、絶世の美女とはこのこと、お時なんか月とすっぽんで比べ物にならい。そのうえ年は二十六で子はおらず、三万両の財産と、店の奉公人は二十三人、その店の主人として迎えると言う、夢のような話に小四郎は思わず気を失った。
越前守 「今、相生屋小四郎死んで、若狭屋甚兵衛に生まれ変わり、このよしと夫婦になり、共白髪まで添い遂げよ。どうじゃ」
小四郎 「へへぇ〜、ありがとうございます。お奉行さまのご恩は生涯背負(しょ)いきれません」
越前守 「これこれ、その方は若狭屋甚兵衛じゃ。もう背負うには及ばん」
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背負い小間物屋(左)・小間物屋(右)
背負い小間物屋は『今戸の狐』・『梅若礼三郎』にも登場する。
*京橋五郎兵衛町は、東京駅八重洲口の銀座側。町名主は代々、中野五郎兵衛。江戸城の鍛冶橋門の前で、古着屋の多い商人の街だった。
「江戸切絵図」の鍜治橋御門の下(東側)に「五郎兵エ町」がある。
*芝露月町は、港区新橋五丁目。古くは日比谷にあった老月村が移転し老月町といった。「江戸切絵図」の右方の源助町の南側 《地図》 |
★立川志の輔の『小間物屋政談』【YouTube】
箱根大沢坂の石畳(「箱根の坂@」)
東海道五十三次箱根(広重画)
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箱根西海子(さいかち)坂の石畳 |
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箱根旧街道資料館内 |
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芦ノ湖
薄曇りで富士山も逆さ富士は見えず。
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箱根杉並木
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箱根関所(江戸口御門)
「入り鉄砲に出女」いわれたが、この関所では江戸からの出女が厳しく取り調べられた。
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小田原宿なりわい交流館
昭和7年に再建した「出桁造り」の旧網問屋の建物。
『東海道(小田原宿→箱根湯本)』
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蒲鉾の籠清
文化11年(1814)の創業。
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小西薬局(国登録有形文化財) 《地図》 |
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ういろう本舗
薬のういろう「透頂香(とうちんこう)」と菓子のういろうの店。
この向かいが清水彦十郎本陣跡だが、今は空き地(駐車場)になっている。
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小田原城常盤木門 |
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小田原城 |
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南町奉行所跡(千代田区有楽町2-8・2-9)
JR有楽町駅南東側のマリオンとその北側あたり。 |
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