「紺屋高尾」
★あらすじ 神田紺屋町の染物屋吉兵衛の職人の久蔵は三日ばかり寝ついている。心配した親方は神田お玉が池の武内蘭石先生を呼ぶ。蘭石先生は久蔵の枕元の高尾太夫の錦絵を見てすぐに、「お医者さまでも草津の湯でも・・・・」の恋の病いと分かる。
久蔵は友達に連れて行かれた吉原の花魁道中で見た三浦屋の高尾に一目惚れしたが、所詮高嶺(値)の花で恋患いになってしまったのだ。蘭石先生は三年間みっちりと働いて十両を貯めれば高尾に会わせてやると約束する。途端に、久蔵は元気になってモリモリと飯を食って、前にも増して働き出した。
すぐに三年は過ぎて久蔵は親方の前へ出て、いくら貯まったか聞くと九両だ。親方は一両足して十両にしてくれ、蘭石先生に指南、案内役を頼み、久蔵の身なりを整えていざ吉原に送り出す。蘭石先生は染物屋の職人ではまずいので、久蔵を流山のお大尽、蘭石先生を抱えの医者、大尽の取り巻きということにして大門をくぐった。
蘭石先生がなじみのお茶屋の女将に高尾太夫に会いたいと頼むと、幸いにも今晩は高尾は空いていて、女将に義理もあってOKという返事。久蔵は三浦屋に上がり、晴れて高尾とのご対面となる。
その夜は初会とも思えないもてなしぶりで、久蔵はもう思い残すことはない。後朝(きぬぎぬ)の別れに、高尾は「今度は主(ぬし)は何時来てくんなます」とせがむが、久蔵は染物屋の職人と明し、三年間稼がなければ来られないと泣きながら打ち明ける。久蔵の真に惚れた高尾は来年二月で年期(ねん)が明けたら、久蔵の所へ行くから女房にして欲しいと、久蔵が持参した十両と形見にと香箱の蓋を渡した。
夢心地で染物屋に舞い戻った久蔵は、高尾との約束を話すが誰も信ずる者などいない。それからというもの久蔵は、「二月、二月」と言っている。やがて年も改まり、二月も十五日、染物屋の前に一丁の駕籠がぴたりと止まった。中からは文金高島田の高尾が現れた。結びの橋渡しをした蘭石先生を仲人に頼み、二人は晴れて夫婦になった。
染物屋の親方は久蔵にのれん分けをし、近所に店を持たせた。そこで久蔵が考案した「早染め」は大評判で大流行して店は繁盛し、二人は末永く幸せに暮らしたという一席。
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紺屋(職人尽絵詞)
神田紺屋町(「名所江戸百景」・広重)
紺屋(染色業者)が多く、町内には藍染川が流れ、
晒(さら)しに利用されていた。
*同じ筋の噺の『幾代餅』は古今亭がやる。三遊亭と立川流は「紺屋高尾」で、柳家はあまりやらないようだ。二代目万治(伊達)高尾の『高尾』もある。 |
紺屋(「江戸商売図会」三谷一馬より)
★三遊亭圓生の『紺屋高尾』【YouTube】
吉原大門
神田紺屋町 《地図》
藍染めを手がける染物屋が軒を連ねていた。
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