「くしゃみ講釈」


 
★あらすじ 横町の「化もん屋敷」と呼んでいた所に講釈小屋が出来た。講釈師は東京から来た後藤一山で上手いと評判だ。
後藤一山のせいで小間物屋のおみっちゃんに振られたが恨み骨髄、一山に仕返しをしたいという。友達はそれなら一山が講釈をしている前へ座り、火鉢に胡椒(こしょう)の粉くすべて、くしゃみをさせ講釈を出来なくさせて、ボロ糞になじって帰ろうという悪知恵を貸す。八百屋へ胡椒を買いに行く男だが覚えが悪く、物忘れが早い。友達は「こしょう」を覚えるのに「のぞきからくりの八百屋お七」の相手の吉祥寺の「小姓」の吉三(きちざ)を思い出せばいいと言う。

 横町の八百屋へ来た男、もう忘れている。仕方なく「のぞきからくり」を語り出したが、なかなか「こしょう」が出て来ない。大声で語る八百屋の前は面白がって見物人がぞくぞく集まり、ついには黒山の人だかりで、八百屋は商売上がったりとなった。やっと「こしょう」にたどり着いた男、「胡椒を二銭おくれ」とほっとしたが、「売り切れてない」でがっくり。八百屋に他にくしゃみの出る物はないかと聞く。八百屋はそんならと、えぐいくしゃみが出る唐辛子(とんがらし)を勧めた。

 やっとトンガラシを買って、待ちくたびれた友達の所へ戻った男、二人で講釈小屋へ乗り込む。講釈師の見台の前にかぶりつき陣取り、準備万端だ。出てきた講釈師の後藤一山、今日の出し物の「難波戦記」を鷹揚に語り始めた。「頃は慶長も相改まり、明くれば元和元年五月七日の儀に候や。大坂城中、 千畳敷おん御上段の間には内大臣秀頼公、おん左側には御母公淀君・・・・・・」、さすが評判通りの語り口に男は聞き惚れている。

 友達に今日は講釈を聞きに来たのではないと言われ我に返り、復讐戦の開始だ。火鉢に唐辛子をくすべ、団扇(うちわ)でパタパタと一山めがけて仰ぎ出した。すぐに効果てき面、一山はくしゃみの連発だ。容赦しない男はこれでもかと仰ぎ続ける。さすがの一山先生もくしゃみには勝てず、語りづづけるのは不可能と判断、客に謝り、明日の晩もう一度語るからと丸札(招待券)を渡して帰ってもらうことにする。
客は皆、気の毒にとおとなしく帰って行ったが、黙っていないのが前に陣取った胡椒組の二人、
「お前のくしゃみを聞きに来たのじゃないぞ」と毒づいて帰らない。
一山先生「あんたがたは何ぞわたしに故障でもおありか?」

 「胡椒がないからトンガラシくすべた」





       



桂枝雀の『くしゃみ講釈【YouTube】




のぞきからくり(「江戸商売図会」三谷一馬より)





表紙へ 演目表へ 次頁へ