「成田小僧」


 
あらすじ 本郷春木町の塗り物問屋、十一屋若旦那の清三郎。大旦那の代参で深川の不動へ行くことになった。お供はお喋りで、ませていて、こまっしゃくれている小僧の長松だ。

大旦那 「深川のお不動さまへ清三郎の供をして行きなさい」

長松 「へえ、ありがたい、若旦那のお供、OK、オーライ」

大旦那 「何がオーライだ」

長松 「若旦那のお供なら大旦那と大違いで、外でご馳走してくれます。人間食べる物をケチッてお金を貯めるようでは偉い人間にはなれません」

大旦那 「生意気言うな。今度はわしが奢ってやるぞ」

長松 「大旦那の奢るは当てにはなりません。この間のお供の時も、沢山飲ませてやると言うから甘酒かと思っていたら往来の井戸水でした」

大旦那 「口の減らないやつだな」

長松 「口が減ったら、ご飯がこぼれてしまいます」

大旦那 「もう何でもいいから気をつけて行け」

長松 「何に気をつけて行けばいいんですか」

大旦那 「うるさい奴っちゃな、何でもすべて気をつけるんだ」、とても口では太刀打ち出来る小僧ではないと思っているところへ清三郎が入って来た。

大旦那 「ああ、このお喋り小僧にも困ったもんだ。小言を言いたいが出がけだから勘弁してやる。お前からよく小言を言ってやっておくれ」と、バトンタッチ。

清三郎 「畏まりました。帰って参りましたら仕置きのために三日ばかり土蔵へ入れて置きます」

長松 「土蔵の中でもご飯は頂けるんでしょう」

大旦那 「縛り上げてしまって飯も食わせないぞ」と、また口をはさんだ。

長松 「そんな事したら小僧殺しって新聞に大きく出ますよ。あたしがいじめ殺されたら閻魔になって盆と正月に大旦那の舌を抜きに来ます」、大旦那は「早く行ってこい」と言うしかない。

 深川の不動でお参りを済ませると長松は上手い事言って、若旦那を深川の料理茶屋の平清に上げて美味い料理に舌鼓だ。

 長松は手洗いですれ違った若い女の美しさにびっくり。おかみに聞くと、山谷堀大和屋小千代という芸者で、幇間の花州と一緒に来ているという。長松は清三郎に強引に勧めて小千代を座敷に呼ばせて大散財するはめに。

 清三郎は料理茶屋へ上がったことさへ大旦那に知れたら叱られるのに、芸者を呼んだことが分かれば勘当とびびっているが、長松は「御一新の世の中、親子の縁なんぞ切れやしません」と、平気のへいざで達観している。

 なんのことはない、清三郎と小千代はお互い一目惚れ、いい仲になって清三郎は大和屋に通い始めたが、しばらく経って清三郎はぷっつりと姿を見せなくなって、小千代はぶらぶら病になってしまう。

 女将は心配して花州に頼んで十一屋を探らせて見ると、店にも清三郎はおらず、探しているが見つかっていないようだと言う。そんなある日、小千代の耳に清三郎はほかの女と逐電したという噂が入った。小千代は血相を変えて飛び出して行ってしまった。

 一方の十一屋の大旦那、いくら清三郎を探しても見つからず、音信も不通でもう死んだものと諦めて、深川の浄心寺に墓まで建ててしまった。

 今日は長松を連れて墓参り。その帰りに吾妻橋で身投げをしようとしている女を助ける。これが長松も知っている小千代で、旦那がいろいろと話を聞いているうちに、赤ん坊の時に里子に出した清三郎の腹違いのと分る。

小千代 「それを聞きましては私はどうしても死ななければなりません。死んで貞女の(かがみ)を立てとうございます」と、飛び込みかけるのを長松が必死に押さえていると、番頭が走って来て、「若旦那から手紙が来ました。桑港にいるそうです」で、一安心だが、

大旦那 「なぜさっきお前は貞女の鑑を立てると言ったのだ?」、小千代が何か言おうとすると、長松がしゃしゃり出て、

「かがみを立てたいわけだ。もとは塗り物屋の兄妹(きょうだい・鏡台)です」


   



深川不動堂
       



料理茶屋「平清」(「江戸高名会亭尽」・国立国会図書館デジタルコレクション)




吾妻橋
吾妻橋」(『写真の中の明治・大正』)
落語の身投げの名所で、『身投げ屋』ほか多数の落語に登場。

吾妻橋





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