「お盆」


 
あらすじ 目白で怪しげでインチキ臭い祈祷を生業としている法印の男は飯炊きの権助と二人暮らし。近頃は祈祷を頼みに来る者もおらず生活も苦しい。

 ある日、使いにやった権助が子狐をぶら下げて帰って来る。どうしたんだと聞くと、
権助 「王子の稲荷で狐穴から出て来る所を見張って獲って来た。この頃は美味い物食ってねえから、狐汁にでもすんべえ」

 そこは一応は神仏に仕える身の法印、「何を言っている。狐は稲荷のお使い姫だ。そんなことをすると罰(ばち)が当たるぞ」と言って狐を逃がした。

 すると間もなく法印の善行?のお蔭か、白山の傾城ヶ窪の商家の番頭が、「主人の娘が原因不明の病で長く臥せっております。医者の見立てによりますと、狐憑きではないかと申します。どうか先生の祈祷で狐を落としてくださいませ」との頼み。こんなチャンスは滅多にない。一計を案じて、

法印 「承知した。必ずや我が祈祷で娘さんから狐を離してみせる。その狐は捕らえてそちらへ証(あかし)として渡すこととしよう。祈祷料は七両と二分かかるが、それでよろしいか」、番頭はあっさりと承知、法印はもうちょっと吹っ掛ければよかったかと悔やんだが、まあ七両二分は久々の大金だ。

番頭 「それでは手付に一両を置いて参りますので、お盆を拝借いたしたい・・・」、お盆はないので箱膳の蓋を代わりしてその上に一両を乗せてもらって受け取った。

 番頭が帰った後、法印は権助に、「畳の上にじかに物を置くのは失礼だから、何でもお盆の上に出すものだ」、さらに「王子へ行って狐を捕まえて来い」と態度を一変、金のためなら背に腹は代えられないのか、神仏などはなから信じちゃいないのか。

 法印は子狐を捕まえて来た権助を連れて傾城ヶ窪の店に向かった。大仰な仕草で娘の寝ている部屋に入って家人は遠ざけて、狐落しのいい加減な祈祷を始めた。頃合いを見計らって大声を張り上げ、「狐が落ちた!」と叫び、権助にこっそりと狐を渡すから出すように言うと、

権助「そうか、それなら台所からお盆を借りてくんべえ」


 
        



「白山傾城ヶ窪」 



曙坂(旧曙町からとった坂名) 《地図
このあたりは下総古河藩主土井家の下屋敷で、鶏声ヶ窪(傾城ヶ窪)と呼ばれた。
下屋敷で毎夜、鶏の声がするのでその場所を掘ったところ、
金の鶏が現れたという故事によるという。
南に鶏声ケ窪があり、「鶏声暁に時を告げる」ことから、暁=曙で町名にした。






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