「堺飛脚」
★あらすじ 船場の商家に出入りしている飛脚屋さん。夜更けに、堺の大浜の淡路屋へ商用の手紙の配送を頼まれる。ちょうど淡路屋の朝飯の頃に届くようにと申し付かった飛脚屋は、時刻を見計らいながら堺筋(紀州街道)を南へ堺へ向かう。
墓場や仕置場がある気味の悪い飛田の森にさしかかると、目の前に子どもみたいのが飛び出てきた。それがヒョイと顔を上げると一つ目小僧だ。飛脚屋はみじんも動ぜず、「このド狸め、年がら年中、夜中にここ通ってんのじゃ。一つ目やなんて古臭い、消えてなくなれ」と一喝すると、ぱっと消えてしまった。
それでも懲りない狸は飛脚屋の行く先々に、唐傘のお化け、三つ目の高入道、行き倒れののっぺらぼうの女となって現れるが、そのつど飛脚屋に、「古臭い、古過ぎる、古いわい古いわい、出直せ!」と、こけにされ相手にされず、消え去るのみだ。
そのうちもう狸も諦めたのか何も出なくなり、大和川を渡って堺の町に入る。
ようやく夜が明けてきたが、まだ淡路屋の朝飯時にはちと早い。そこで海岸で寄せては返す波を見ながら煙管(きせる)でパクリパクリと一服だ。すると大きな波が来て、引いた後の砂浜に大きな鯛がピチピチと跳ねている。
飛脚屋が、「こんな見事な鯛を土産にできるとはありがたい」と、持ち上げようとすると、
鯛がグウーと目え向いて、「これでも古いかい」
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★桂米朝の『堺飛脚』【YouTube】
*落語『紀州飛脚』・『さかい夢』
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