「さかい夢」

 
あらすじ いつも陽気で能天気な喜六が心配事でもありそうな顔をしているを見て、
清八 「どなんしたんや、そんな顔して?」

喜六 「けったいな夢見て、ちょっと気にしてるねん」

清八 「どんな夢見たんや」

喜六 「それがゲンの悪い夢でな。ミナミへ出て、芝居裏から千日の墓原の方へブラブラ歩いてんのや。そしたらさらし首があるねん」

清八 「あそこは仕置場やさかい」

喜六 「嫌なもん見たなあと思いながら鉄眼寺の方へ行くと、ヤクザ者たちが喧嘩してるねん。目の前でズバーッと刺されよって、わても巻き添え食って刺されそうになって必死に駆け出して行って懐(ふところ)に手入れたら落としたんのか、盗られたんやら財布がないねん」

清八 「それでどうしたんや」

喜六 「なぜかまた紀州街道をどんどん南へ歩るいてるのんや。そしたら道端に仰山人がたかってんのや。よう見たら雁金五人男がくくられて、裸馬に乗せられて飛田の仕置場で磔(はりつけ)になるちゅうねん」

清八 「ほんにえげつない夢やな」

喜六 「また南へ歩き始めたんやが、腹が減ってしょうもないから、大和橋渡ってのおじさんとこ行って、何か食わせてもらおうと思ったら橋の脇に風呂敷包があるのや」

清八 「拾うたんか?」

喜六 「うん、開けて見たら団子のような物が包んであるので、こりゃありがたいと手に取ったら馬の糞やった。そしたら土手の草むらを狐が逃げて行くのが見えよった」

清八 「あそこらへんは人を化かす狐が出る所やねん」

喜六 「頭に来たから風呂敷包を川の中に投げ込んだら、バリーンという音で目がさめた。投げたのは枕で障子の桟(さん)を折ってしまったのや」

清八 「夢の中でそこは大和橋渡ったとこやったのか?」

喜六 「・・・そや、ちょうど橋渡ったとこや」

清八 「そりゃあよかった。渡ったんなら心配いらへんで」

喜六 「何でやねん」

清八 「場所が場所じゃ。そら、さかい(堺・逆)夢や」







鉄眼寺
落語『土橋万歳



雁金五人男



大和川を渡る阪堺線 《地図
紀州街道』の大和橋(大阪市と堺市の境)から






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