★あらすじ★ 亀坊が父親の熊さんにまとわりついて小遣いをねだるがもらえない。それじゃ、お母っさんにもらうという。この間、留守の時に来たおじさんのことを近所中に話すといえば必ずくれるという。
これを聞いた熊さんは不安になって、話の続きを聞きたがる。亀坊は寄席で聞く時も木戸賃は前払いだといって金をせびるので、仕方なく5円を渡す。
亀坊 「お母っさんはそのおじさんの手を取って、嬉しそうに”うちのがいなくてちょうどよかった”なんて言って座敷にあげた」、「それからどうした」で、もう10円せびられる。
亀坊 「お母っさんが外へ遊びに行くようにとお金をくれたので、後は分からない」
熊さん 「なんで肝心なところで外へ出て行ったんだ」
亀坊 「あたいも気になったから戻ってきて障子の隙間から覗いた」、「どうだった、何が見えた」と熊さんは気が気でない。
亀坊 「ここは大事な切れ場だからもう10円おくれ」、熊さんが仕方なく10円を渡すと、
亀坊 「よく見たらそのおじさんは、いつも来る横丁の按摩(あんま)さんだった」と言って、外へ駆け出して行ってしまった。
そこへ帰ってきたかみさんにこの事を話して呆れられるが、かみさんはうちの亀坊は近所の子ども達より知恵が働くなんていう。熊さんはあんなのは知恵者じゃあない。それに引き換え真田幸村の子どもの頃はと、「真田三代記」の一説を女房に語り始める。
「城を取り囲まれた時、まだ14歳だった幸村が、父の昌幸に進言し、敵方の永楽通宝のついた旗を立てて夜討ちに出て、敵方が混乱し同士討ちをしているすきに脱出し危機を逃れ、それ以来、真田の家紋は永楽通宝を6つ並べた六連銭になった。大阪城落城後は薩摩に落ち延びたともいわれている。うちのガキとは比べものにならない」
こんな話をかみさんにしていると、亀坊が帰って来た。金を返せというと講釈を聞きに行って全部使ってしまったという。何の講釈かと聞くと真田三代記だと言い、すらすらと語り出す。
亀坊は六連銭とはどんな紋なのかを聞く。熊さんが上に3つ下に3つ並べてあるんだと話しても何度も聞くので、こういうふうにと50円玉を並べ始る。亀坊は今度は自分が並べると言い、銭をかき集め、全部持って表へ飛び出して行ってしまった。
熊さん 「こん畜生、また講釈を聞きに行くのか」
亀坊 「今度は焼き芋を買ってくる」
熊さん 「ああ、いけねえ うちの真田も薩摩へ落ちた」
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