★あらすじ 神田白壁町に住む左官の金太郎は柳原で書付けと印形と三両入った財布を拾う。めんどうなことになったと思いながらも、書付けにある神田竪大工町の大工の吉五郎に届けようと長屋にやって来る。
障子に穴を開け中をのぞくと吉五郎は鰯(いわし)の塩焼きで一杯やっている。中に入って拾った財布を受け取れと差し出すと、長五郎は余計なお節介をしやがってと言い、書付けと印形は大事な物だからもらっておくが、落とした金はもう自分のものではないから受け取れないと言う。
二人は受け取れ、受け取れないの言い合いを始め、ついには取っ組み合いの喧嘩となる。ドシン、バタンの大音で驚いた長屋の隣の者が大家を呼びに行く。
大家は吉五郎に親切に届けてくれた物は素直に受け取り、後で手土産でも持って礼に行くのが人の道なのになぐりかかるとは何事だと叱るが、てめえなんかにぐずぐず言われる筋合はないと吉五郎は強情だ。呆れた大家は南町奉行の大岡越前守に訴えて白州の砂の上で謝らせるからと、金太郎を引上げさせる。
白壁町の長屋に帰った金太郎はこの事を長屋の大家に話すと、それではこっちの顔が立たない、先方の大家が訴える前にこっちから訴えてやれと願書をしたため南町奉行所へ。
二人に南町奉行所から呼び出しがかかり大岡越前の調べが始まる。事の仔細を聞いた越前、二人がどうしても受け取れないという三両を預るといい、改めて両人に正直の褒美として二両づつ与えると言う。
越前はこれは三方一両損の調べだという。金太郎が届けた金を受け取れば吉五郎に三両入り、吉五郎がいらないと言った金を金太郎がもらっておけば金太郎に三両入る。そして越前がその金を預ったままでいればこれも三両だが、一両たして二人に二両づつの褒美として与えたことにより、三人とも一両づつ損をしたという勘定になるというのだ。
全員ありがたいお調べと納得すると、お膳が出てくる。鯛の塩焼きに真っ白い炊き立てのご飯だ。二人ともたいそうなご馳走に舌鼓を打ち食べ始める。腹が減ったらちょくちょく喧嘩をしてまたここに来ようなんて調子のいいことまで言っている。
二人の食べっぷりを見ていた、
越前守 「両人いかに空腹だからじゃとて、あまりたんと食すなよ」
吉五郎 「多かあ(大岡)食わねえ」
金太郎 「たった一膳(越前)」
|