「締め込み」

 
あらすじ 路地奥の家に、「今日は、お留守ですか」と空き巣に入った泥棒、家人はいないが長火鉢に火がおきていて、やかんの湯が煮立っている。家の者はすぐ帰って来ると思い、急いで箪笥の引き出しから盗んだ物を風呂敷に包んで、逃げようとしたら八五郎が帰って来た。

 泥棒は裏から逃げようとするが塀で行止まりで、あわてて台所のへっついの横の羽目板を上げて床下に隠れた。帰って来た八五郎、女房はいないし、お湯は沸きっぱなし、見ると大きな風呂敷包みが置いてある。箪笥の引き出しも開けっ放しだ。

 早とちりの八五郎はてっきり女房間男と逃げるのだと思い込む。そこへ女房がフロから帰って来た。仏頂面でキセルを吹かせている八五郎に話しかけるが、何も答えず怒ったような顔をしている。長湯をして留守にしたことを怒っていると思い謝るが、八五郎は突然、離縁状をやるからすぐこの家から出て行けと言い出す。間男して逃げる算段をしていたのだろうと、風呂敷と開いた箪笥を指さすが、身に覚えのない女房もかんかんに怒りだし、二人の馴れ初めの、八五郎が無理やり言い寄った時の「”うん”か”出刃”か、”うん出刃”か」なんて内輪話なんかを持ち出して八五郎に逆襲だ。

 分が悪くなった八五郎、口ではかなわないと、たぎった湯の入ったやかんを投げつけた、これが台所に転がって湯が床下にだらだらと流れ落ちた。床下に隠れていて煮え湯を頭から浴びた泥棒さん、たまらずに這い上がって来た。不思議そうに見る二人を尻目に、泥棒は夫婦喧嘩の仲裁に入った。

 ついに風呂敷包みはこの泥棒がこしらえたと分かり、二人は喧嘩別れせずに済んだと泥棒に感謝、調子に乗った泥棒は、「これをご縁に、またちょいちょい伺います」なんて図々しい。

八五郎 「冗談じゃない。泥棒にちょいちょい来られたんではたまらない。しっかり表の戸締りをしろよ」

女房 「だって、もう泥棒は家の中にいるのに・・・・」

八五郎 「じゃぁ、表から心張棒かえ」





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