「鈴ヶ森」
★あらすじ ちょっと抜けている泥棒の見習いが、頭(かしら)と追剝ぎの実地訓練に行くことになる。頭が「舅(しゅうと)に食わせるからむすびを風呂敷に包め」と言うと、「誰の舅ですか?」と、まだ泥棒の基礎知識も頭に入っていない。
舅はうるさいから犬の符牒なのだ。頭が「ドスを差して行けよ」、見習い「どうしてドスと言ぅんですか」、「うるせぇな、ドッと刺して、スッて抜くからだ」と、頭はもう投げ槍だ。
頭、「表へ出ろ。戸締まりはしたか。近頃、物騒だからな」、「もう大丈夫です。物騒なのが二人出て行きますから」、なるほどごもっともだ。
頭は今日は鈴ヶ森で追剝ぎだと明かすと、見習いは「鈴ヶ森は幡随院長兵衛や白井権八みたいな強いのが出て来るし、暗くて怖いから、もっと明るい所にしましょ」なんてすっかり逃げ腰で頼りない。
頭は歩きながら追剝ぎの決まりゼリフを教える。「お~い、旅人。ここを知って通ったか、知らずに通ったか。明けの元朝から暮れの晦日まで、俺の頭の縄張りだ。知って通れば命は無し、知らずに通れば命は助けてやるが、身ぐるみ脱いで置いて行け。嫌じゃ何じゃと抜かせば最後の助、伊達には差さぬ二尺八寸段平物をうぬが土手っ腹にお見舞え申す」だが、覚えられるはずがない。
見習いは、「紙に書いてください」、頭「こんな暗くて書けるか」、見習い「あっしも読めませんから、相手に読んでもらいましょ」と情けない。
やっと鈴ヶ森に着いて見習いは、竹藪に身を隠すが筍に尻を突かれもがいている。そこへ旅人が通り掛かった。怖がる見習いを頭はポンと押し出した。
旅人の前で見習いはたどたどしく脅し文句を並べ始める。それでも何とか、「身ぐるみ脱いで置いて行け。・・・・・二尺八寸段平物をうぬが土手っ腹にお見舞え申す」にたどり着いた。
旅人は追剝ぎの様子から、とうしろう上り、泥棒の前座だなと見破り、「四の五の言うと首根っこ引っこ抜くぞ」と、反撃に出た。
見習い泥棒 「やめて、やめて! 身ぐるみ脱ぐから勘弁してください」
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★桂文治(11代目)の『鈴ヶ森』【YouTube】
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