★あらすじ 老中筆頭、酒井雅楽頭(さかいうたのかみ)の三人の子の末っ子の角三郎、どういう訳か父親にうとまれ、鶏声ヶ窪の下屋敷で部屋住みの身。用人の清水吉兵衛夫婦と三人暮らしで出世の見込みはない。とはいえ当の角三郎は生来、呑気なのか腹が大きいのか全く意に介さず自由気ままに毎日を暮していた。
ある夜、書見が過ぎて肩がこりあん摩の錦木を呼んで揉んでもらう。錦木は世事に明るく、商売上手、話し上手で、角三郎はすっかり気に入ってひいきにする。
今日も角三郎の体も揉んでいた錦木は、角三郎の骨格は大名になる骨組みだという。さすが商売上手とも思ったが角三郎も冗談半分に、もし自分か大名になったら錦木を検校にしてやると約束する。錦木は自分の見立てによほど自信があったのか真に受けて、喜んで帰って行った。
そのうち錦木は大病にかかり、一月も寝込んでしまう。ちょうどその頃、酒井雅楽頭が隠居し、長男は病弱、二番目は女子のため末っ子の角三郎が家督を継ぐことになった。用人の清水吉兵衛もご意見番に出世した。
この話を見舞いに来た長屋の安兵衛から聞いた途端にすっかり病の癒えた錦木は、雅楽頭の屋敷に駆けつけると、約束通り検校の位を授かった。
文武両道に励むの雅楽頭は南部産の栗毛の名馬を買い求め「三味線栗毛」と名付けた。錦木がなぜ名馬に「三味線」なのかと聞くと、
雅楽頭 「酒井雅楽頭で、ウタが乗るから三味線だ。コマ(駒)という縁もある。乗らん時は、引かせる(弾かせる)、止める時はドウ(胴)と言うではないか」、
錦木 「もし、ご家来衆が乗りました時は」
雅楽頭 「その時は、バチがあたるぞ」
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