「植物小咄四題」
(七草・妙国寺の蘇鉄・茄子の夢・長芋)

 
《七草》 昔は七草の日に、七草をまな板の乗せて、「ななぐさ、なずな、唐土の鳥が、日本の土地に渡らぬ先に、トントンパタリ、トンパタリ・・・」と節をつけ拍子を取って、包丁でトントンと刻む。それに合わせて、家内一同が「オテテテ・・・」と唱える風習があったという。大陸から疫病が運ばれて来ると思われていたのだろうか。
 新町の七越太夫はなぜかつまみ食いだ大好きというか趣味。ある日、客が横を向いている隙に、ちょこっと魴鮄(ほうぼう)の身を食べたところが、小骨が喉に刺さって、「オテテテ・・・」

             

《妙国寺の蘇鉄》 上方見物に来た江戸っ子、京都を回って「寺ばかりで抹香臭くって、青物ばっかし食わせやがって、三日も辛抱できやしねえや」、大坂の道頓堀へ行って「猿若町の芝居に比べたら、こんなもん・・・どれもこれも将軍様のお膝元にはかなわねえや」、何やかやとそれでも堺までやって来て、妙国寺の蘇鉄を見て「なるほどこいつはでけえや」、「こんな蘇鉄は江戸にもおまへんやろ」、
江戸っ子 「ソテツ? 俺はワサビかと思った」

               
                       妙国寺のソテツ


《茄子の夢》 なんでも大げさに言う男が、「わて、ゆんべどえらい大きな茄子の夢を見たんや」、「どんくらい大きかったんや?」、「闇の晩にヘタつけたようやった」

                     

《長芋》 江戸っ子の二人連れが、西新井大師にお参りに向かう途中で千住の先まで来ると、「下にいろ、下にいろ」の声。大名行列かと思って頭を下げていると、行列はすぐに通り過ぎてしまった。隣にいる土地の人に、

江戸っ子 「今のは大名行列じゃないんですかい?」

土地の人 「あれは将軍さまへ献上される長芋を入れた長持だあね」

江戸っ子 「なんでえ、芋かい、馬鹿馬鹿しいじゃねえか」

土地の人 「いんや、仕方ねえや、長芋(長い物)には巻かれろだ」

                    



 
「道頓堀角芝居」(浪花百景・歌川国員画)・「猿若町夜の景」(名所江戸百景・広重)



妙国寺
紀州街道➀



西新井大師山門


688(2018・3)




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