「狸さい」
★あらすじ 昼間、荒寺の境内で悪ガキたちにいじめられている子狸を助けた八公の家へ、子狸が礼に来る。
子狸 「両親に親方に助けてもらったことを話しましたら、腹を叩いて喜んで、恩返しをしてこい、恩を知らないやつは、人間と同じと言われまして・・・、このまま帰ると勘当されてしまいますから、どうか、当分ここへ置いてください」ということで、子狸は八公の家に居候して、掃除、洗濯、炊事と、まめに働き出した。
八公の家にはろくに金なんかないのに飯時にはいいおかずが並んでいる。葉っぱをお札にして買ってきて、おつりはほんとの銭をもらって来るから小銭もどんどんと増えて行って好都合だ。
八公は子狸にサイコロに化けるように頼む。サイコロをよく知らない子狸にサイコロを見せながら、
八公 「表と裏を合わせりゃ七だ。一(ぴん)の裏が六、二の裏が五(ぐ)・・・てえ具合だ。三は斜交いに並んでなけりゃ駄目だ・・・ちょっと化けて見な」、子狸が化けたサイコロを振って見ると、出るのは一ばかり。
八公 「一ばかりじゃいけねえや。たまには他のものも出なくちゃ怪しまれる・・・」
子狸 「一が一番出しやすいんで。逆立ちして尻の穴を見せればいいだけなんで・・・」
八公 「向こうへ行ったら、おれの言う通りの目を出してくれりゃあいんだ。上手く頼むぜ」と、狸のサイコロを懐に賭場に乗り込んだ。「ちょぼ一」という、壷にサイコロを一つ入れ、目を当てる博打で、
八公 「よし、一だ。分かったな、一に張るぜ」で、これは子狸が一番出しやすい尻の穴で見事的中。
八公 「さあ、今度は二だぞ、目の玉だぞ・・・」でまた的中。八公は目を読んで、その目を狸サイが出すから連戦連勝で大儲け。
賭場の連中 「お前が目を読むとその通りに出ちまう。目を読むな、黙って勝負しろ」
八公 「わかったよ。目読まなきゃいいんだな。今度は加賀様、天神様、梅鉢、梅鉢だぞ、頼むぞ・・・」、壷皿を開けると、狸が冠をかぶり、笏(しゃく)を持って立っていた。
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★古今亭志ん生の『狸賽(さい)』【YouTube】
太宰府天満宮
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