「辻駕籠」


 
あらすじ ぶらぶらと遊んでばかりいて店賃を溜め込んでいる甚兵衛と喜六が、家主の勧めで辻駕籠を始める。

 天王橋あたりで客を引いているが、「これから湯へ行くんだ。手ぬぐいぶら下げているのが目に入(へえ)らねえのか。どじな駕籠屋だ」、前掛けしてチリ取り持った近くの店の若い者を無理やり乗っけようとして番頭に怒鳴られたりで、なかなか上手く行かない。

 やっと粋な身なりの男が来て、「おい、北国(ほっこく)へやってくれ」

甚兵衛 「北国、そんな遠くへは行きません」

男 「北国も知らねえのか。だよ、吉原だよ。急いでやってくれ」、乗ったはいいがのろのろで、なかなか進まない。

客 「おぉ、なにやってんだ。いちげえにやってくれ」、しばらくして様子がおかしいので、

客 「おい、ちょっと待て、ここはどこだ?」

喜六 「へえ、水戸様で・・・」

客 「こら、どこへ行くつもりだ」

喜六 「さっき、市ヶ谷って言ったじゃありませんか」

客 「冗談じゃねえや、あまり遅えからいちげえに行けと言ったんだ。いちげえは急いでということだ。あきれてものが言えやしねえ。もう吉原へ行く気はなくなった。ここで降りるから履物出してくれ」

喜六 「おい、甚兵衛さん、草履出せよ」

甚兵衛 「草履? いけねえ、忘れて来ちまった」

客 「どこまで間抜けな駕籠屋なんだ。裸足じゃ帰(けえ)れやしんえや。仕方ねえから深川(たつみ)へやってくれ」

喜六 「辰巳、辰巳、甚兵衛さん、辰巳だとよ」、何を思ったのか甚兵衛が駕籠から離れて行く。

喜六 「おいおい、どこへ行くんだ」

甚兵衛 「どっかで磁石借りて来る」



  



        

679(2018・3)




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