「月宮殿星の都」


 
あらすじ
 素人鰻の主人が今日もをつかまえようとして悪戦苦闘だ。手の間からするすると上に逃げて行く鰻を追って行くうちに、梯子を掛けて屋根まで上ってしまった。

 すると突然の雷雨となって虚空蔵菩薩のお使い姫の鰻は竜のように変身して、鰻屋をぶら下げたまま大空高く舞い昇ってしまった。

 「おい、しっかりしろ」の声で気が付くと、虎皮の褌(ふんどし)で赤裸、背中にいくつも太鼓を背負っている男が立っている。

鰻屋 「ココハドコ、アナタハダレ?」

五郎蔵 「ここは中天だ。俺は雷の五郎蔵だ。人間が上がって来るとは珍しい。下界の話も聞きたいから家に来いや」、ということで五郎蔵の家へ、

鰻屋 「立派な門ですね」、「雷門だ」、五郎蔵の家で一杯飲みながら下界のことをいろいろと話してやると、

五郎蔵 「よし、今度は俺が天界を案内してやろう。ついて来い」、しばらく行くと周りを柵で囲ったところがある。

五郎蔵 「気をつけろ、ここが久米仙人が地上へ落ちた穴だ」、カタカタカタカタと音が聞こえて来る。

五郎蔵 「織物工場で機織り姫の部下の星たちがを織っている音だ」、しばらく行くと格子の中に綺麗な女たちが座っている。

五郎蔵 「ここは遊郭で、この店は乙女座だ」

鰻屋 「へぇ、さすが天界ですな。吉原なんぞと違ってみんなお行儀よく正座(星座)していますな。あそこの店はみんなオネエさんみたいですな」

五郎蔵 「あぁ、あれは蠍(さそり)座の女たちだ」、立派な月宮殿が見えてきた。前を大勢が箒(ほうき)で掃除している。

五郎蔵 「ほうき星たちが掃除しているんだ」、月宮殿の中はきらびやかでまるで竜宮城のようだ。あちこち回って、

五郎蔵 「ちょっと仕事で地下室まで行くから一緒に来な」、薄暗い地下の一室の前に来るといい匂いが漂ってくる。

五郎蔵 「俺が集めた人間の臍(へそ)佃煮にして保存してあるんだ。もうじき月宮殿の節分でばらまくから出来具合を見てみる」と、葛籠の蓋を開けて佃煮を試食している。

五郎蔵 「よっしゃ、ちょっと上に行って報告して来るからここで待っててくれ」と行ってしまった。鰻屋はあまりのいい香りについへその佃煮を一粒つまんで食べてみるとその美味い事、頬っぺたが落ちそうだ。

 これは鰻より商売になると葛籠を背負って逃走を図る。あちこち下に降りるところを探しているうちに、葛籠が盗まれたのを発見した五郎蔵が部下たちと追って来た。

五郎蔵 「太え野郎だ。せっかく助けてやった恩も忘れやがって。おとなしく葛籠を置いてお縄につきやがれ!」

 芝居好きな鰻屋 「五右衛門が葛籠負うたがおかしいか」、なおも逃げ回っているうちに久米仙人の穴にスポッとはまってしまった。

 風に吹かれながらどさっと落ちたのが、ちょうど鰻屋の裏口。かみさんが日和がいいのに空から変なもんが落っこちてきたと、長い柄杓で頭をめった打ち、よく見るとこれが亭主でびっくり。

かみさん 「鰻とどこで遊んで来たんだよ」

鰻屋 「雷のとこから土産にへその佃煮盗んで来た。なんでおれを杓で打ったんだ」

かみさん 「へそ(江戸)の敵(かたき)を長杓(長崎)で打(討)ったんだよ」

   


        

680(2018・3)




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