「無精床」


あらすじ 通りがかりのガラガラの床屋へ入ったのが運の尽きの
「空いてますか」に「見りゃ分かるだろう」、「頭をやってくれ」に「どこへ」、「いい男にしてくれ」に「無理だ」と親方は無愛想で素っ気ない。

 親方は元結ぐらいは自分で切れという。頭を湿すのに湯をくれと頼むと、湯なんかぜいたくだ、うちは水か唾(つば)だと言い、桶の水で頭を湿せという。桶の中を見るとはボウフラがうじゃうじゃ。親方が、きれいな水は横町の井戸に行けばあると言うので、小僧に頼んで汲みに行かそうとすると「うちの小僧は水汲みに置いてるんじゃねぇ。自分で汲んで来い」だ。仕方なく桶の縁を叩いて、ボウフラが沈んだ隙に水をすくって頭を湿すハメになった哀れな客。

 さあ親方が頭をやってくれると思いきや、十歳の鼻たれ小僧の稽古台にされてしまう。生きた物は親方のケツを剃った以来、2度目の挑戦だ。高下駄を履いて外をキョロキョロ見ながらカミソリを振り回すので生きた心地がしない。カミソリは下駄の歯を削ったボロボロの刃でその痛いこと。小僧はしまいには居眠りし始める有様だ。

 見かねた親方は小僧をポカリだが、手が届かず客の頭で間に合わせだ。頭がしみて痛いので手をやると血がダラダラ、これを見た親方、少しもあわてず騒がず、「小僧、紙と糊を持って来て張っておけ、すぐ止まるから」と原始的で野蛮だが効果満点の止血法を試みる。

 するとがのそのそと店へ入って来て客のそばをウロウロし始めた。親方は犬を追い払おうとして客はそっちのけとなる。客は早くこの店を逃げ出したいから、犬なんかにかまってないで、早くやってくれとせがむ。

 親方が言うには、「俺がこの前、うっかりして客の耳を片っぽ剃り落した所に、この犬が入って来てペロっと食っちまった。それから人間の耳の味をしめたようで、客が来るといつもよだれ垂らして待っていゃがるんだ」と怖い話を披露した。親方は追い払おうとするが、犬は逃げるどころか、チンチン・お回りなんか芸を始めた。

 これを見た親方、可愛そうになってご褒美をやらねばと、
親方 「そんなに欲しいか、しょうがねぇなあ、じゃあ待ってろ、今のこの人に頼んでやるから」

     


古今亭志ん朝の『無精床【YouTube】

落語『浮世床』・『片側町


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