★あらすじ 江戸は中橋の古方家の名医、尾台良玄の弟子の銀南は頭は人並み以下だが、色気と食い気だけは誰にも負けない。ある日、玄関で薬を刻みながら居眠りをしている銀南を呼んだ良玄先生は、橋場の御寮で療養している蔵前の伊勢屋のお嬢さまの所へ代脈に行くように命じた。銀南は代脈が代診ということさえ知らない。
銀南を「若先生」ということにし、大先生の代診で橋場の御寮に行くことにし、御寮での挨拶から礼儀作法を細かく教えるが銀南はふざけ半分で聞いていて心もとない。
良玄先生はさらに、「先日の往診の折に、お嬢さまはどういう具合か、ひどく下っ腹が堅くなっておった。腹をさすって下腹をひとつグウと押すと、プイとおならをなすった。お嬢さまは今年十七で小町と呼ばれる器量良し、顔を真っ赤にして恥ずかしそうだ。これはいけないと、掛け軸に見惚れて何も聞こえない振りをして、そばの母親に”近頃は年のせいか、陽気のせいか耳が遠くなったようで、おっしゃることは大きな声で言ってくださいまし”」と話し掛けてお嬢さまを安心させたと話した。
銀南は、「器量良しの十七才のお嬢様のお腹をさする」で、すっかり興奮、やる気満々で、良玄先生の頓智、気づかいのことなどはどうでもいい。銀南は駕籠に揺られ、居眠りの大イビキで橋場の御寮に到着、手代に案内された八畳の間で羊羹を頬張りお茶を飲み、どじを重ねてお嬢様の寝ている部屋へ通された。
母親にトンチンカンな挨拶し、待ちかねたとばかり、「お脈を拝見」で、猫の手を取って引っ掻かれる。そんなことにはめげずに銀南先生、お嬢さんのお腹をさすり出し、堅いシコリを見つけ大喜び。
良玄先生はそっと触っただけなのに、グイッと本気で押したから、ブウゥ〜〜と大音響のオナラが出た。それでも銀南先生、「どうも年のせいか、陽気のせいか近頃耳が遠くなっていけない」とまではよかったが、
母親 「先だって大先生がお見えになった時も、お耳が遠いとおっしゃってましたが、若先生も」
銀南 「ええ、いけませんとも。だから今のおならも聞えませんでした」
|