「胴取り」

 
あらすじ 中之島の大名の蔵屋敷中間部屋の博打場で、すってんてんに負けた職人の男。安いヤケ酒をかっ喰らって、「♪取られ取られて、フンドシまで取られ、ノミやシラミが今頃質屋でひもじかろ・・・」なんて、ふらふらと歩いていると、田舎の侍らしいのが、「これ、越中橋へはいずれへ参(めえ)ったらよかろかの」

 博打で負けてむしゃくしゃしている上に、酒の勢いも手伝って、田舎侍と見て侮って八つ当たり、
職人 「わしゃ、何もおめえに道教えるために歩いてんのやないわい!」と、啖呵を切った。さらに、「北へ行って見ろ、駄目なら南だ。東に行っても西へ行っても駄目なら、川へ飛び込んじめえ。そうすりゃ流れ着いて越中橋にぶつかるってえもんだ」

侍 「武士たる者に向かって無礼は許さんぞ」

職人 「何を抜かしやがる。武士が怖うて鰹節が食えるかい。おめえら鰹節のダシを使うたんもんも食うたことないやろ。このダシなし野郎!」と、悪口雑言の言いたい放題。

侍 「この腰の物が目に入らんか」

職人 「そんなもん、目に入ったら手妻師になるわい。二本差しが怖うて田楽が食えるかちゅうんじゃ。気の利いた鰻なんぞ四本も五本も差してるわい。どうせ鰻なんか食うたこともないやろ、この田舎侍!」と、いきなり「カーッ」と痰(たん)を吐きつけた。

 ついに堪忍袋の緒が切れた侍、腰をひねると抜き手も見せずに「エイッ!」と、見事な居合で胴斬。侍はそのまま、「♪この川波にぱっと放せば、おもしろの有り様や・・・」と、鵜飼を謡って行ってしまった。

 斬られた職人のはポーンとそばの天水桶に乗っちまって、足だけがひょこひょこと向こうへ歩き出した。
職人 「えらいこっちゃ、こら足!ちょっと戻って来い!」、そこへちょうど運よく友達が通りかかった。

職人 「すまんが銭持うてたらちょっと貸してえな」

友達 「何やそんなかっこして。銭無いこともないが・・・」

職人 「そこにいてる足の腰の所に、その銭くくりつけたっとくれ」、「どないするねん」

職人 「胴を取りに行かすねん」



   




越中橋(土佐堀橋から)  《地図
橋の北詰に肥後・細川越中守の蔵屋敷、南詰めには播磨藩の蔵屋敷があった。
大名屋敷の中間部屋ではよく賭場が開帳された。町方の手が入りにくく、
比較的安全な賭場だったようだ。屋敷の連中も寺銭で懐を潤していたのだろう。
猫定』にも愛宕下の藪加藤の中間部屋が出て来る。

 
 
越中橋(昭和初期) (『大阪の橋』より) 



中之島・土佐堀川



遠妙寺  謡曲「鵜飼」の発祥地 「説明板➀」・「説明板②
甲州街道(黒野田宿→石和宿)』





表紙へ 演目表へ 次頁へ