「素人鰻」  桂文楽(八代目)

 
★あらすじ 元旗本の武士が汁粉屋をやろうと店を探していると「神田川の金」という、贔屓(ひいき)にしていた鰻さきの職人に出会う。

 金さんの勧めで鰻屋を開業することにした。士族の商法というやつだ。腕がいいが、酒癖の悪い金さんは酒を断って店を手伝うという。

 開店の日に祝いの酒だと主人の友達が金さんに飲ませたところ、だんだん悪い酒癖が出てきて暴れ出し、店を飛び出してしまう。

 職人がいなくなって困っていると、金さんは吉原から付き馬を引いて帰ってきた。昨日のことは、何も覚えていないという。黙って遊び代を払ってやると、今度は金さんは酒を飲まず一生懸命働きだし、腕はいいので店も順調になる。

 主人はすっかり喜び、ある日閉店の後、酒を出してやるが飲まないで寝てしまう。ところが夜中に家の酒を盗み飲みして、またもや悪口雑言の末、店を飛び出してしまう。次の日も同じだ。仏の顔も三度やらでもう帰って来ない。

 困った主人は仕方なく自分で鰻をさばこうとし、捕まえにかかるが捕まらない。糠(ぬか)をかけたりしてやっと一匹捕まりかかるが指の間からぬるぬると逃げて行く。

 なおも鰻を追って行く主人。それを見て女房がどこへ行くのかと声をかける。

主人 「どこへ行くか分かるか。前に回って鰻に聞いてくれ」

 収録:昭和61年
NHKラジオ「語り芸の世界」


      


 昭和29年に芸術祭賞を受けた噺です。
ふだんは猫のようにおとなしい神田川の金が、酒が入りだんだんと酔って行き、ついには虎になり悪口雑言の大暴れをするくだりと、金さんがいなくなり主人が自分で鰻をさばこうとして鰻を捕まえにかかり、逃げ出す鰻を追いかけるくだりがこの噺の見せ場でしょう。文楽の細かく計算した演出ぶりが聞いているだけでも伝わってくるようです。 金さんの酒癖の悪さは、「らくだ」の屑屋さんと似ていますが金さんの方が一枚上手の酒乱ぶりです。

この噺の元は、三遊亭円朝の「士族の商法(御膳汁粉)(素人汁粉)」で、明治の初めは武士が商売をはじめようとし、間に入った者にだまされたりして随分失敗したそうです。

柳家小三治の『素人鰻【YouTube】


   鰻屋「神田川本店
(千代田区外神田2−5)

文化2年(1805)の創業





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