「権助魚」

 
あらすじ
 ある商家のおかみさん旦那がおさんを囲っているようで、飯炊きの権助一円握らせて、旦那のお供をしてお妾の家を突き止めてくれと頼む。

 床屋から帰って来た旦那は、向島丸安さんに用事があるからすぐ出掛けると言う。おかみさんは嫌がる旦那に権助をお供につけさせる。旦那は足手まといの権助を巻こうとしたが、そうはさせじと、おかみさんの忠犬、権助はぴったしくっついて離れない。

 旦那はおかみさんの企みと察して、権助が一円もらっていることを白状させ二円で買収する。ころっと寝返って旦那の忠犬となった権助に旦那、「両国橋の袂でばったり丸安さんに出会い、ちょうどよいと柳橋の料理屋の二階でお話しが済んで、芸者、幇間(たいこもち)を呼んでどんちゃん騒ぎ。天気がいいので隅田川で舟で網打ちを楽しんだ後に、みなさんで湯河原へ向かいました。明日の昼時分にはお帰になります」と、報告するよう言い含め、さらに、「女房は疑り深いから帰りに魚屋で網捕り魚を買って、隅田川で網打ちで捕った魚です」と、お土産に持って帰るようにと作戦を伝授した。

 がめつく、しっかり者の権助は魚屋で買う魚代は、この二円から出すのかと旦那に食い下がる。仕方なく旦那は魚代としてもう五十銭を渡してお妾さんの家へまっしぐらだ。

 一方の権助さんは店への帰りがけに魚屋に寄り、「網捕り魚をくれ」、「ここにあるのはみんな網で捕れた魚だ」で、ニシン、スケソウダラ、目刺し、かまぼこ、サメ(鮫)の切り身を買って店に帰った。

 さすが権助さん、旦那に教わった通りのことをすらすらと、おかみさんに報告した。おかみさんは、旦那と権助が店を出たのが2時で今が2時20分、そんないろんなことが出来るはずないと、すぐに権助が旦那に買収されて寝返ったのを見破った。

 それならばと権助さん、隅田川で網打ちで捕ったという魚を披露し始めた。前に並べられた魚を見たおかみさん、泣きじゃくりながら番頭に、「旦那ばかりか、飯炊きの権助まで馬鹿にしやがって、隅田川で捕れたなんて、ニシンにスケソウダラ、目刺しにかまぼこ、一番しまいにはサメまで買って来やがって」

番頭 「サメを、はっはっは、人を喰うやつだ」


   


古今亭右朝の『権助魚【YouTube】




隅田川両岸一覧 大橋の網引」(葛飾北斎画・「無為庵乃書窓」より))



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