★あらすじ 長屋の隣の坊主が毎夜、鉦(かね)を叩くので眠れない八五郎。文句を言いに行くと坊主は元は武士の島田重三郎で、吉原の三浦屋の高尾太夫と二世を契った仲だという。
高尾は仙台の伊達の殿様から身請けされたが、重三郎に操を立てて殺されたので、坊主になって名も道哲と改め毎晩こうして回向をしているという。
坊主は高尾と取り交わしたという魂返す反魂香(はんごんこう)を火鉢にくべる。すると、(幽霊登場のお囃子に乗って)高尾が現れる。
高尾 「お前は、島田重三さん」
重三郎 「そちゃ女房、高尾じゃないか」
高尾 「仇(あだ)には炊いてくりゃんすな。香の切れ目が縁(えにし)の切れ目」
これを見た八五郎、三年前に死んだ女房に会いたいから反魂香を分けてくれと頼むが、これは自分と高尾の間だけにしか効き目がないと言って断られる。
仕方なく八五郎は、薬屋へ買いに行くが名前を忘れてしまって、越中富山の反魂丹を買って帰る。早速、火鉢にくべるが煙だけ出て女房は出てこない。
一袋全部くべてしまって部屋中煙だらけでむせていると表の戸を叩く音がする。
女房のお梅が現れたと喜んで戸を開ける。
八五郎 「そちゃ女房のお梅じゃないか」
お崎 「隣のお崎だけどね、さっきからきな臭いのはお前の所じゃないのかい」
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