★あらすじ 麻布茗荷谷に住む正直者のくず屋の清兵衛さん。ある日、清正公脇の裏長屋で身なりは粗末だが、品のある器量よしの17,8の娘に呼び止められ、浪々の身のその父の千代田卜斎から、仏像を200文で買い受ける。仏像を荷の上に乗せ、細川邸の下を通りかかると、若い家来の高木佐久左衛門が仏像を見つけ300文で買い取る。
高木がぬるま湯で仏像を洗っていると、台座の紙が破れ中から50両が出てきた。高木は清兵衛の来るのを待ち受け、「仏像は買ったが50両は買った覚えはない」と、50両を卜斎に返せという。
清兵衛は50両を卜斎に家に届けに行くが、「売った仏像から何が出ようとも自分の物ではない。その金は受け取れぬ」という。再び高木の所へ行くが高木も受け取らない。
困った清兵衛さん、卜斎の長屋の家主に相談し、卜斎と高木に20両づつ、清兵衛に10両ということにし、卜斎は20両のカタに普段使っている汚い茶碗を高木に渡すことでやっと納得する。
このいきさつを聞いた細川の殿様に高木が茶碗を見せると、これが「井戸の茶碗」という世の名器だ。殿様は300両でこれを買い上げる。清兵衛は150両を卜斎に届けるが、卜斎はむろん「その金は受け取れぬ」だ。
清兵衛は、「また高木様に何か差し上げてその代わりに150両もらうことにすればいい」というが、卜斎にはもう高木に渡す物がない。卜斎は考えたあげく、150両を支度金として娘を高木氏へ嫁がせたいという。
喜んだ清兵衛さん、早速この話を高木に伝えに行く。高木も千代田氏の娘なら間違いないと話は早い。
清兵衛 「今は裏長屋に住んでいて、ちょいとくすんでいますが、こちらに連れてきて磨いてご覧なさい、いい女になりますよ」
高木 「いや、もう磨くのはよそう。また小判が出るといけない」
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