★あらすじ ある日、熊五郎はお店(たな)の番頭と茶室に使う木口を木場へ見に行く。途中で前の花魁の悪妻女房のお島、その前の亀吉の母親の良妻賢母のお徳の話や、亀吉が好きだったまんじゅうの話などする。まんじゅう屋の前を通るとつい亀吉のことを思い出して涙ぐんでしまい、店の職人から「清正公様の申し子じゃないか」と言われたという。
話ながら歩いていると番頭が亀吉が歩いてくるのを見つける。熊五郎は番頭を先に行かせ亀吉に話かける。
熊五郎 「今度のおとっつぁんは、おめえを可愛がってくれるか」
亀吉 「おとっつぁんは、おまえじゃないか」
熊五郎 「おれは先(せん)のおとっつぁんだ。新しいおとっつぁんがあるだろ?」
亀吉 「そんな分からない道理があるもんか。子どもが先に出来て、親が後から出来るのは芋ぐらいのもんだ」
別れた女房のお徳は独りで仕立ての針仕事をして、貧乏暮らしをしながら亀吉を育てているという。熊五郎はこれまでのことを亀吉に詫び、50銭銀貨の小遣いをやり、ウナギを食わせるから明日また会おうと約束する。
家に帰った亀吉は母親の糸巻の手伝いをしている時にお金を持っているのを見つる。
お徳 「なんだい、こりゃあ、まあ、50銭銀貨じゃないか。どうしたんだい、お使いを頼まれたのかい。どうしたんだい?・・・おまえまさか悪い了見出して盗んだんじゃないだろうね。はっきりとお言いな、言わないと玄翁(げんのう)で叩くよ」、ついに亀吉は泣きながら父親に会ったことなどを話し出す。
あくる日、亀吉は約束通りに鰻屋へ行って父親とウナギを食べていると、鰻屋の前を母親が行ったり来たり。亀吉は母親を座敷へ引き入れてやっと両親が再会し、ご対面となるが二人ともかしこまって堅くなり、照れて他人行儀でもどかしい。
熊五郎 「えへん、えへん、じつは昨日ねえ、亀坊に会ったんだよ。で、ウナギが食いてえって言うもんだから、じゃあ、食わせてやろうじゃねえかってことになって、・・・えへん、えへん、じつは昨日ねえ・・・」なんども同じことを繰り返していて埒があかない。
亀吉の「元のように3人で一緒に暮らしてよ」の一言で熊五郎はお徳に頭を下げ、元の鞘に収まる運びとなった。
お徳 「こうやって夫婦が元の鞘に収まれるのも、この子が有ったればこそ。お前さん、子は夫婦の鎹(かすがい)ですね」。
亀吉 「え、あたい鎹かい、それで昨日、おっかさんが頭を玄翁でぶつと言ったんだ」
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