「一分茶番(権助芝居)」

 
あらすじ 町内恒例の素人芝居の当日だが、なかなか幕が開かない。伊勢屋の若旦那が役不足で仮病を使って来ないのだ。世話役は飯炊きの権助を代役にと考え、番頭に権助を呼ばせる。番頭が権助に芝居をやったことがあるか聞くと、村の鎮守の芝居で「ちょうちんぶら」に出たことがあるという。よく聞くと「忠臣蔵」で七段目の一力茶屋の段でおかるの役だったという。相手の勘平はどんどろ坂の茂十で、むろんどたばたの舞台だったようだが、この際せいたくなことは言っておれず、番頭は権助に一分渡し代役を頼む。

 今日の出し物は『有職鎌倉山』で、権助の役は「まんまと宝蔵に忍び込み」、鏡を盗み出し、捕まって縛られ首を斬られるという非人の権平だ。役回りを聞きながら権助は何度も断って一分を返そうとするが、全部芝居のこと、長いセリフも鏡の裏側に書いておくから心配ないと、何とか納得させる。

 やっと舞台の幕が開くが、役者がなかなか出てこない。そこへ押されて宝蔵の壁から転げ出てきた権助さん、「・・・まんま、まんま・・・」と叫んでいるのが、伊勢屋の若旦那ではなく、飯炊きの権助と分かると客が「どうした権ちゃん、まんま焦がしたか」とはやし立てる。すると自尊心を傷つけられたか権助さん、「始めチョロチョロ中パッパ、赤子泣いても蓋とるな」なんて飯の炊き方を講釈しはじめる。

 ついに捕まって後ろ手に縛られた権助さん、客が「権ちゃんどうした、縛られたな」とやじると、「本当は縛られてねえ、ほらこのとおり」なんて両手を前に出す有様だ。捕り手役は怒って本当に縛り、刀でキリキリと絞り上げる。
捕り手役 「誰に頼まれた、白状しろ」

権助 「番頭さんに一分もらって頼まれた」

 三遊亭鳳楽
「ビヤホール名人会」



       
     一分金
 
*『有職鎌倉山』(浄瑠璃・歌舞伎)は、天明4年(1784)の田沼意知暗殺事件を、謡曲の『鉢の木』に見立てたものという。徳本寺(東京都台東区)には田沼意知を暗殺した佐野政言の墓がある。佐野政言は「鉢の木」の佐野善左衛門常世の子孫とも伝えられる。

権助魚』・『権助提灯』・『宗論』にも登場する田舎者の権助さん。いつも笑われて(笑わせてか)いるが、憎めない好人物で噺の主役にもなれば名脇役にもなる貴重な存在だ。



金原亭馬の助(初代)の『権助芝居【YouTube】


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