「子別れ 中」

 
あらすじ 吉原の遊女屋で熊五郎は品川宿で馴染みだった遊女のお島に出会う。すっかり意気投合し、4日間も居続ける。有り金を使い果たし、「朝帰りだんだん家が近くなり」で、きまり悪そうに神田竪大工町の長屋に帰る。

熊五郎は女房のお徳に謝るどころか、あれこれと言い訳をし、お島とのノロケ話までしだす有様だ。

お徳 「あきれたねえ、女郎部屋に4日も泊まって、・・・台所の様子をごらんね、お米は切れる、薪は切れる、炭は切れる、醤油は切れる、塩も砂糖も切れる」

熊五郎 「おっそろしく切れるもんばかり並べやがったな。なにか切れねえもんはねえのか?」

お徳 「菜っ切り包丁が切れないよ」

 熊五郎はお徳が怒ると逆に開き直り手を上げる始末だ。仲裁に入った長屋の吉兵衛さんにもへ理屈を並べて楯突き、女房の肩ばかり持つのはあやしいとお徳との仲を勘ぐる。これには面倒見のいい吉兵衛さんもすっかりあきれて出て行く。さすがにお徳も愛想も根も尽き果て、亀坊を連れて出て行ってしまう。

 うるさいのがいなくなり、これ幸いにとお島を引っ張り込むが、「やはり野に置け蓮華草」で、朝寝が大好きで、昼間から大酒を飲んでばかりで家事などは一切できない女だった。

熊五郎 「おい、起きろよ」

お島 「まだ眠いよ、もう少し寝かせておいておくれよ」

熊五郎 「冗談じゃねえや、おらあ、仕事に行くんだ、早くしなきゃ間に合わねえや」

お島 「仕事に行きたきゃ、早くお出でな」

熊五郎 「飯を食わずに行けねえじゃねえか。起きて、飯を炊いてくれよ」

お島 「いやだよ、おまんまなんぞ炊くのは。そんなもん炊くくらいならこんなとこへ来やしないやね。橋場の善さんのとこへ行っちまわあね」、毎日がこんな調子で、熊五郎が追い出そうと思い始めた頃、女の方から「はい、さよなら」と出て行ってしまった。

 やっと目が覚めた熊五郎。女房、子どもにすまないことをしたと思うが後の祭り。酒もぷっつり、遊びもやめて仕事に精を出す。元より腕は立つ大工職人、3年も経たないうちに信用もつき得意先も増え、若い者も2,3人使い、親方とも呼ばれるようになった。


    



大工(職人尽絵詞



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