「猫芝居」
★あらすじ 芝居狂いの若旦那、今日も使いに行った途中から芝居見物によれてしまって、夜遅くにご帰還だ。毎度のことに業を煮やした大旦那は怒って若旦那を二階へ上げて梯子をはずしてしまった。
芝居に夢中で夕飯も食っていない若旦那は腹ペコだ。ここまでは『七段目』の若旦那、『蔵丁稚』の定吉と同じような展開だが、ここの若旦那には強い味方の忠猫、駒(二代目?)がいるのだ。
若旦那の危急を察知した駒猫は屋根づたいに二階に来て、芝居がかって、
駒猫 「わがご主人は因業親父のこらしめのために二階のわび住まい。食い物さえも差し入れる忠義な者なき難儀の身の上。首尾よくまんまと盗み出したるこの鯛を一刻も早く、ご主人さまに届けんと、窓から飛び出し屋根伝い、向こうの高屋猫にかぎつけられねえその内に・・・」、すると隣家の高屋猫が、「おい、駒猫待て、待ちやがれ!」
駒猫 「待てとおとどめなされしその声は、こりゃ高屋猫、俺になにか言いがかりでもつける気か」
高屋猫 「おお、知れたことよ。料理番の目を盗み、盗み出したるその鯛を向こうの庇(ひさし)で睨んでいたのよ。さあ、おとなしくキリキリこっちへ渡してしまえ」
駒猫 「しゃらくせえ、なにをほざくか高屋猫、たとえこの身はばらばら、骨になるともこの鯛はご主人さまのため、誰がてめえなんぞに渡そうや」
高屋猫 「渡さなければ腕ずくなりと」
駒猫 「おぬしが腕ずく、笑わせるねえ」
高屋猫 「なんでもねえこと」
駒猫 「そりゃまたどうして」
高屋猫 「ちょっとこうして」
駒猫 「なにをこしゃくな」、ついに芝居好きな二匹の猫の大立ち回りが始まった。くんずほぐれつしているうちに、高屋猫は足を滑らせて屋根から転げ落ちてしまった。
駒猫 「やや、高屋猫は落ちて行ったるか。また上がってくる間にこの鯛を若旦那に一刻も早く」、障子を叩くと開けた、
若旦那 「おお、駒か」、駒がくわえていた鯛をポトンと落として、「ニャ~ン」
若旦那 「待ちかねた」
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忠猫の駒ちゃん?
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