「二番目」
★あらすじ 婚礼のあった商家に芝居好きの泥棒が入った。泥棒は酒盛りのあとがそのままになっている大座敷で残り物の酒を飲んで酔っぱらって、熊坂長範だとか弁天小僧だとか言っている。
その声で座敷の片隅で酔っぱらって寝ていた小僧の定吉が目を覚ます。
定吉 「おい起きろよ亀どん。泥棒だ、泥棒が入ったよ」と小声で、隣で寝ている亀吉を揺り起こす。
亀吉 「知ってるよ。あたいは泥棒と塩辛は大嫌いだから寝たふりしてたんだよ。盗まれたってどうせ主人の物だから構うことないよ」、すると泥棒は音羽屋を気取って若夫婦の寝ている二階へ上がって行こうとする。
泥棒 「さあ、石川五右衛門がせり上がって行くぜぇ」
定吉 「五右衛門がせり上がるとさ」
亀吉 「芝居好きの泥棒だな。おれが三味線弾いてやろう。町内に触れ込んで見物人呼んで木戸銭を取ろう」
定吉 「誰が来るもんか」
亀吉 「定どん、台所から金盥(かなだらい)と桶持ってきて叩いておくれ。おれは楼門五三桐の三味線弾くから・・・」、泥棒は鳴り物入りに大喜び。
梯子段の真ん中で止まって芝居ががって、
泥棒 「絶景かな、絶景かな、春の眺めは価千金とは小さなたとえ。五右衛門が目からは価万両、さすがに永き春の日も、西へ傾く桜の夕暮れ。はて、うららかな眺めじゃなあ~・・・」
定吉 「おい、亀どん、上がっちまうよ」
亀吉 「よし、おれが羽柴久吉になって止めてやらあ」、そばにあった袖無しを着て笈摺(おいずり)の代わりにして、手ぬぐいを頭巾のつもりでちょいと被って、芝居がかって、
亀吉 「石川や浜の真砂は尽くるとも・・・」
泥棒 「ななっ、何がなんと」
亀吉 「世に盗人の種は尽きまじ」、泥棒が「エイッ!」と打ったつもりの手裏剣を柄杓で受けたつもりで、
亀吉 「婚礼にご容赦(巡礼にご報謝)・・・」
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*「二番目」とは、昔の芝居では舞台の横に舞台番が座っていて一番目狂言が終わり、二番目狂言が始まる時に、「二番目じゃ、二番目じゃ」と叫んだ。この噺では二階に新婚夫婦が寝ている。芝居好きの泥棒は一番目狂言を合方入りでやって、次に始まる二番目狂言と新婚夫婦の二番目をかけて、「二番目じゃ、二番目じゃ」と、バレがかってサゲていた。 |
南禅寺三門(ウィキペディアより)
石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」の名科白の場
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