「王子の幇間」


 
あらすじ 旦那に東京中を引き回され、最後は王子稲荷でお百度を踏まされた幇間の平助、ついた仇名が王子の幇間

 平助は陰と日向、裏と表を使い分け、呼ばれてもいないのにどこにでも出入りし、人の失敗や弱みにつけ込んで困らせて楽しんでいる。みんなから嫌われて鼻つまみ者になっているが、本人は平気の平左で一向にお構いなしに傍若無人に振舞っている。

 今日も旦那の店へやって来ると、旦那はお内儀とちょっと打ち合わせて奥へ引っ込んでてしまった。平助は小僧の長吉をよいしょして持ち上げ、女中の田舎育ちのお鍋どんを飯を炊くのが上手と褒めてから、顔の白粉が厚過ぎて歩くとぼとぼとを落ちてしまうとからかい、お鍋どんが泣き出すと、あんたの顔は泣く顔じゃないと馬鹿にし、着物から帯、はては足の大きいのに難くせをつけて笑っている。

 次の標的は赤子を負ぶっている婆やだ。あんたは先代萩の正岡のようだなんて持ち上げるが相手にされないので、今度はそばにいるだ。猫を可愛がってあやしていたと思ったら化け猫扱いしてひっかかれ、挙句はちょうど居合わせた鳶の頭に五円くださいとしつこくせびったが、断られると頭(かしら)が花魁に惚れられているとか、女郎屋稲本の二階で三味線を弾いていたとすっぱ抜き、こっぴどく頭をぶたれる始末だ。

 奥でお茶を飲んでいたお内儀のところへたどり着いた平助は勝手にお菓子にぱくつき、お内儀の茶碗でお茶も飲んでしまうという呆れた図々しさだ。

平助 「おや、今日は旦那様は・・・」

お内儀 「またしらばっくれて。お前が取り巻いてどっかで遊んでいるんでしょ。もう四日も帰って来やしない。どうせお前は旦那に頼まれて家の様子を見に来たんだろ」

平助 「それは濡れ衣で・・・、それなら私が大秘密を申し上げいたしましょう。近々、旦那は稲本の瀬川花魁を身請けしますよ。そうして貴方を追い出して、その花魁がこの家に入って来ますよ。・・・実にあたくしは貴方が可哀想で、貴方が追い出されるようでは神も仏もない・・・」と、涙をボロボロと泣き出した。

お内儀 「お前さん泣いてくれんのは嬉しいけど目んとこにお茶殻がついてるよ」

平助 「あたくしはごく悲しくなると目からお茶殻が出ますので・・・、まだ大秘密があります。貴方とあたくしが姦通をしているという噂が・・・」

お内儀 「旦那がそういう心持ならあたしはお前さんと逃げてもいいんだよ」、「へぇっ!」と驚く平助に、

お内儀 「この葛籠を背負っておくれ。金の延べ棒が六十三本入っているんだよ。この可愛がっている猫のミーとこの鉄瓶も持って行っておくれ」、重たい葛籠を背負わされて、

平助 「どうも色男の図じゃないね、こりゃあ・・・」

お内儀 「あたしを好きならぶっても怒らないね」と、ぽかぽかと平助の頭をぶちながら、

お内儀 「旦那さま、どうぞお出あそばせ」、奥から旦那が出て来ると、

平助 「あぁ、こりゃあ・・・旦那さまですか、ご機嫌よろしゅう・・・」

旦那 「馬鹿、こんな葛籠を背負いやがって」

平助 「へぇ、金の延べ棒が六十三本・・・」

旦那 「馬鹿、石臼が二つ入ってんだ。猫を提げて、鉄瓶提げよって、平助!なんてざまだ!」

平助 「へへっ、旦那様これは御近火のお手伝いでございます」

旦那 「火事なんざどこにもないだろが」

平助 「今度あるまで背負っております」


      
   


桂文楽(八代目)の『王子の幇間【YouTube】

上方落語『茶目八






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