「茶目八」

 
あらすじ 茶目八という裏も表も、影も日向もある幇間。とにかく口から出まかせにベラベラと喋るのが面白いので、意外にひいき客も多い。

 ある日、茶目八はひいきの旦那のお妾(てかけ)さんお家に行って、旦那のことをべんちゃら三昧で誉めそやす。さぞかしお妾さん喜ぶと思いきや、「わて、この頃うちの旦さん嫌になってるねん」

茶目八 「なんででんねん。あんなに男前やし、金は仰山持ってはるし、よう気がつくし・・・」

お妾さん 「けど、あの人あっちこっちで浮気ばっかりしてるしな。それにちょっと油断のならんとこあると思はへんか、あんた」

 こう言う誘い水にはすぐに乗って行くのが茶目八で、
「そう言うとな、こないだわたし旦那に殺されかけましたんや。朝早うに寝ているところを叩き起こされて、散歩じゃ言うてあちこち引きずり回され、ついでに高津さんから、生玉さんまで行こかちゅうて、朝飯も昼飯も食わされずに一心寺さんから、清水さんまで引っ張られて、”玉出の滝に打たれるねん。お前も一緒に打たれえ”言うて、裸にされて滝に飛び込まされましたんやがな。腹が減ってフラフラのところへ冷たい滝の水を被って、目が回ってドタッと倒れてしもうた。旦さんは滝のしずくを頭にちょこっと振りかけて、”これでも同じこっちゃ”言うてさっさと行ってしまいますのや」

お妾さん 「そやろ、そういう所のある人やさかい、わたしが別れるちゅう気持ち、分るやろ。あんたわたしと一緒になって連れて逃げてえな」

茶目八 「逃げまひょ、逃げまひょ」

お妾さん 「旦さんに預かってる金の延べ棒や銀の塊なんかはどうしたら・・・」

茶目八 「そんなもん置いとくことがおますかいな。行きがけの駄賃ですがな、もろて行きまひょ」、がっついた茶目八は骨董品、掛け軸、鏡台、宣徳火鉢、柱時計なんかを背負ったり、首にぶら下げたり、お妾さんはおまけにまで茶目八の懐に押し込んでいる。

お妾さん 「茶目八さん歩けますか」

茶目八 「へえ、何とか歩けますわ」で、駆け落ちの準備完了、いざ出発のところで、

お妾さん 「まあ、面白い格好やこと。旦さん、早く出て来て見てみなはれ」

旦那 「茶目八、ええ格好やな」

茶目八 「わぁー、旦さん、居てはったんかいな」

旦那 「何やお前、火事場泥棒見たいやないか」

茶目八 「へえ、火事にもあいまひょかいな。今、顔から火が出ました」



    




高津宮絵馬堂
この前の茶店が上方落語の「崇徳院」の出会いの場所。江戸落語『崇徳院
高津宮は『いもりの黒焼き』・『高津の富』にも登場する。



高倉稲荷神社(高津宮境内)
『高倉狐』(江戸落語の『王子の狐』)の舞台



生玉さん(生国魂神社
落語『蛸坊主



一心寺
落語『天神山



清水坂 「説明板
下寺町2丁目から清水寺の北側を東に上る。《地図



玉出の滝(清水寺)
京都の清水寺の「音羽の滝」を模した滝で行場となっている。
大阪市内唯一の滝だが、この流れでは茶目八でもぶっ倒れないだろう。







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