「死ぬなら今」


 
あらすじ 阿漕な商売で身代を築いた船場の大店の赤螺屋吝兵衛(けちべえ)は、病となり余命幾ばくも無いと悟る。せがれの孝太郎を呼んで、随分と人を泣かせて来たので地獄行きは免れまいと語り、「地獄の沙汰も金次第」と言うから、三途の川の渡り賃を入れる頭陀袋に六文銭と百両を入れてくれと頼む。百両を閻魔大王への賄賂、袖の下に使って、地獄行きから極楽行きに乗り換えようという魂胆だ。死んでからもすべては金で解決できると思い込んでいる所が、吝兵衛さんの吝兵衛さんたる所以なのだ。

 孝太郎はむろんこれを遺言として聞き入れる。すると気が緩んだのか安心したのか、吝兵衛さんはコロッと死んでしまった。さて葬式の時に孝太郎が吝兵衛の首の頭陀袋に百両を入れようとする所を、口うるさい親戚の叔父さんに見つかってしまう。天下のお宝、通用金を土に埋めるとはもったいないし、不謹慎と言い出した。孝太郎が遺言だからと言うと、叔父さんはそれなら、芝居で使う小道具小判を代りに入れればいいと提案する。歌舞伎の梅川忠兵衛封印切で見た小判は本物そっくりだったと言う。早速、手を回して芝居用の小判を手に入れて、知らぬが仏の吝兵衛さんの頭陀袋に入れた。

 三途の川を渡って閻魔大王の前へと引き出された吝兵衛さんに、閻魔大王は浄玻璃の鏡で、吝兵衛の世渡りの悪徳悪業の数々を見せる。そして閻魔大王は、「この悪徳ぶりは鬼畜生にも劣る。地獄へ落とせ」と判決だ。がっくり首をうなだれた吝兵衛さんは、首に掛かる頭陀袋を見て百両のことを思い出した。こっそり取り出して閻魔さんの袖の下に滑り込ませた。すぐに重みで小判と気づいた閻魔さんは、「魚心あれば水心」で、すぐさま「一代でこれほどの身代をなしたのはあっぱれというもの。極楽へ通れ」と、逆転無罪となって吝兵衛さんはすんなりと極楽へ行ってしまった。

 一部始終を見ていた赤鬼、青鬼らの閻魔の庁の役人ども、どこの国の役人も同じで、汚職の閻魔さんを諌め、糾弾するどころか、俺たちにも分け前をくれと騒ぎ出した。弱みを握られた閻魔さんは、その晩から赤鬼、青鬼らを引き連れ、冥土のキタとミナミで偽小判を湯水のように使って遊び回る。しばらくするとその小判が極楽へと回って来た。本物の小判を見慣れている極楽人は偽小判とすぐに見破り、北町奉行所へと届け出る。地獄での最近の閻魔大王らの遊蕩・放埓ぶりを耳にしていた奉行は特別機動隊を地獄へ派遣、キタのキャッチバー「血の池」で雌鬼たちと戯れている閻魔大王以下を全員逮捕で監獄行きとなった。
地獄は閉店休業となっているので、「死ぬなら今」



     
「宇多津の閻魔さん」(浄泉寺)《地図》      
 香川県一の大きな閻魔像    


桂文我(三代目)の『死ぬなら今【YouTube】





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