★あらすじ 天王寺の五重塔を再建した紙屑問屋の淡路屋太郎兵衛の淡太郎旦那。
九之助橋の屋敷を出てぶらぶらと歩いていると、お菰さんが数人で日向ぼっこをしている所へ通りかかった。
淡太郎 「ええ天気じゃな」
お菰さん「へえ、ええ天気でみな喜んでおります。すいばれはかなわんでな」
淡太郎 「すいばれとは何じゃ?」
お菰さん 「雨のことで・・・」
淡太郎 「お菰さん仲間の言葉かいな。何をしてるのや」
「へえ、ゴロタ取っとりまんねん」
淡太郎「ゴロタちゅうと?」
「シラミのことでんねん」、何を思いついたのか、
淡太郎 「そのゴロタの生きたやつ、うんと集めておくれ。何ぼかで買わしてもらうよってに」、翌日、ゴロタを持ってきたお菰さんたちを庭に入れて、淡太郎旦那は紙を広げて、その上にゴロタを開けさせる。
一人づつに一分ももらったお菰さんたち、「・・・あしたはなんぼほど持ってきまひょ」とがめつい。
淡太郎 「そない要らんわ。もうええがな」、シラミを空気穴を開けた竹筒に入れて蓋をして二日ほど棚の上に置いて、開けて見るとゴソッと減っている。うんと血吸ったやつが二日間で腹減らして小さくなってしまったのだ。
淡太郎旦那はそれを懐に入れて新町のお茶屋に上がる。芸妓らが集まると、
淡太郎 「・・・女は後ろ姿ちゅうことがある。今日は襟足のきれいなもんに褒美をやろう。みな向こう向いてずっと並べ」と、幇間の一八まで並ばした。
淡太郎 「ええ、襟筋してるわい。よし小判を入れたやろ」と、筒から出した飢えたシラミちいちいを小判と一緒に入れて行く。最後の一八にはおまけにとごっそりと入れてやる。
しばらくするとみんなモゾモゾし出す。我慢できなくなって一八などは、歌って踊ってごまかそうとする。淡太郎 「なんや、客の前でみんなでモジモジ、見苦しい」、ついには芸者の襟からシラミが這い出して来た。
淡太郎 「あ、それ、シラミが這い出してるやないか。ここはシラミ飼うてるような芸者、使うてるのか!」、みんなプツッ、プツッと潰したり、火鉢の中に放り込んだりで大忙し。
すると一八 「旦さん、あんさんの袖口からもゾロゾロと這い出てまっせ」
淡太郎 「しもた!蓋するの忘れた」
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