★あらすじ 博打で負けて無一文の喜六と清八、お多賀さん(多賀大社)へは寄らねばと、「鴻池と住友」がお忍びで身をやつして旅をしているのだと偽って旅籠に泊る。まあ、宿の方でもそんな与太話を信じちゃいないが。たらふく飲み食いし、夜中に旅籠を抜けだした二人は夜道を行く。
山道にさしかかる頃、何やら大勢の人影が見えたので、無銭飲食で後ろめたい二人はあわてて松の大木に上って身を隠した。するとやって来た連中は、松の根元でたき火を囲んで酒盛りを始め、がやがやと大声で話している。よく聞くとこの山を根城とする山賊で、今日奪った獲物を自慢し合っているのだ。
そのうちに、山賊は獲物を松の木の下に埋め出した。これを見ていた松の木の上の二人、山賊が去った後に掘り返して大儲けと舌なめずりだ。でもなかなか山賊は立ち去らない。
木の上で冷えて来た喜六は小便がしたくなり我慢できずに、上からシャ〜ッと。これが山賊の頭にかかった。
山賊の親玉は、この松の大木の枝に羽を休めに来た天狗の小便だといい、祟りが恐いと怖気づき出した。手下たちもえらいことになったと逃げ腰になる。木の上の二人は「天狗だぁ〜」と大声でおどすと、山賊どもはあわてふためいて逃げて行った。
まんまと山賊が埋めた金の入った瓶(かめ)を掘り出して、「とんびに油揚げ」ならぬ、「天狗で油揚げ」をさらった二人だが、
喜六 「この瓶はわいのもんやで」
清八 「馬鹿言うたらあかん、二人で山分けや」
喜六 「そやないで、わいが先にこの瓶に唾(つば)、小便つけたんや」
清八 「アホ言うな、おまえが木によう登れんよって、わいが汚いケツ押して登らせたんやがな。そやなければおまえは山賊に捕まっていたんや。瓶はわてのもんや」、ついに瓶の争奪戦が始まって、瓶を引っ張り合う始末だ。
二人があまり強く引き過ぎて瓶が割れたと思ったら目が醒めて、宿の枕が破れていた。
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