「茶代」


 
あらすじ 田舎からお大尽の旦那が江戸見物にやって来た。お供の吾助馬喰町の旅籠に泊まって昨日は両国橋を渡って回向院境内の見世物小屋に入った。大イタチだとか大ベナなんて変てこな物に散財させられたが、旦那は江戸というところは面白いところだと感心しきりだ。

 今日は浅草界隈の見物だ。旦那は吾助に、「茶店に寄って茶代を払う時は、わしがおい、六助行こうと言ったら六文、八助行こうと言ったら八文払うことにするべえ」と言いつけてある。

 雷門近くの茶店で休んでいると、空模様が怪しくなってきた。
旦那 「こりゃあ雨になるべえや。ここに来る途中にあった傘屋で傘、買って来てくんろ」と、吾助を買いに行かせた。

 旦那は茶店の親父と話しながら待っていたが、道に迷ったのか吾助はなかなか戻ってこない。そのうちに晴れてもう雨の心配はなくなった。待ちくたびれて、

旦那 「わしは先に仲見世通って観音様へ行くから供の八助が来たら茶代をもらってくだせえ」と出て行ってしまった。

 これを見聞きしていた茶店の女房、「おまえさん、あの旦那はこの前来た時は供の人を六助と呼んでいて茶代を六文置いて行ったよ。なぜ同じ人なのに今日は八助と呼んだんだろ?」

親父 「ははぁ、そうか、旦那が六助と言ったら六文、八助と言ったら八文払えということだな。よっしゃ、ひと儲けしてやろう」

 やっと吾助が傘を買って戻って来た。
親父 「旦那さんは先に仲見世から観音さまに行きやした。茶代は百助からもらうようにと仰って・・・」

吾助 「えっ、百助? こりゃあ困った、三十二助しかねえずら」



寛永通宝



浅草寺雷神門之図(江戸名所尽)

浅草寺



雷門


雷神門前広小路並木茶屋(「絵本江戸土産」広重画)


        

676(2018・3)




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