★あらすじ 日本橋馬喰町の刈豆屋吉左衛門という旅籠屋。
年に一度の大掃除の日、通い番頭の善六が台所へ行くと、将軍家から拝領したこの家の宝の御神酒徳利が転がっている。びっくりして、しまう場所を探したが適当な所がない。とりあえず隅の水瓶に入れ、掃除に戻りすっかり忘れてしまう。
徳利のないことが分かり店中大騒ぎとなる。善六も徳利のありかを聞かれたが、自分が水瓶に入れたことをすっかり忘れているので「知りません」と答える。
善六が家に帰り、女房と話をしている時に、ふっと徳利を水瓶の中に入れたことを思い出す。善六は、今さら自分が徳利を水瓶の中に入れたとは、言い出しにくいという。女房が占いで見つけることにしたらと言う。女房の父親は占い者なので、父親が言うような口上を善六に教え、算盤(そろばん)で占うようにと勧めて善六を店に送り出す。
店で善六は、生涯に三度、易が当たると言い、そろばんで見事に徳利のありかを当てる。
この話を聞いていたのが、泊まっていた大阪の鴻池善右衛門の支配人。主人の娘の病気を占いで見てもらいたいと言う。
いやがる善六を女房が知恵をつけ、善六は鴻池の支配人と大阪へ出発する。神奈川宿で新羽屋源兵衛という定宿へ泊まろうとしたが様子がおかしい。薩摩藩の客の七十五両と密書の入った巾着が紛失したと言う。鴻池の支配人は店のために二度目の占いを立ててくれと善六に頼む。
善六は逃げ出す覚悟でいろんな物を用意させ、占いの部屋にこもる。夜中に、店の女中がやって来て、自分が巾着を盗んだと白状する。父が病気だが薬も飲ませてやれず、店に前借りをお願いしたが断られたので盗んだという。巾着は庭のお稲荷さまの床下に隠したという。
大喜びの善六、早速みんなを呼び、適当に算盤をはじき、まことしやかに、お稲荷さまのお宮が壊れたのを放って置いたので、お稲荷さまが怒って巾着を隠したと告げる。むろん、そこから巾着は出てくる。
新羽屋からお礼にもらった三十両から五両を親孝行な女中にやって旅立つ。大阪の鴻池家に着いた一行。善六はたいそうなもてなしを受けるが、三度目の占いのため格好つけて水行をする。すると二十一日目に神奈川宿のお稲荷さまが現れる。新羽屋の稲荷は、家に祟りをなし、霊験あらたかなりと参詣人が押し寄せ新しいお宮も造られ、その上、正一位も賜ったという。
お稲荷さまは、鴻池の家の下に、観世音の仏像が埋まっていると言い、これを取り出し、崇めれば娘の病気は全快し、鴻池家も万代繁栄すると告げる。
善六は早速、店の者が皆そろっている前で、占いを披露する。そして、仏像が掘り出される。店の米蔵を開き貧民にほどこすと功徳のおかげか娘は全快する。大喜びの鴻池家では、善六に何かお礼をしたいと言う。善六が馬喰町で旅籠屋をしてみたいと言うと、立派な旅籠を建ててくれた。
今までの奉公人が一夜にして一軒の主人になれまして、今までとは生活が桁違いによくなったという。もちろん、こりゃ桁違いになるわけで、算盤占いでございますから。
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